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事故・礼於side
「とりあえず、ちょっと待っててね。すぐ新しいの持ってくるから…あっ!そば粉切れてたんだった!どうしよう近くのコンビニにあるかなぁ?」
一人でオロオロし始める奴ーーミナセ。カルチャーショックから立ち直った俺はドアに寄りかかり右手を差し出した。
「え?」とミナセは目を丸くする。
「…それでいい。寄越せ」
俺の言葉に、ミナセは心底驚いたように「ええっ」と後ずさる。「だ、ダメだよ!落としたものを人様にあげられないよ!」と首をブンブン振って拒絶する。俺は舌打ちした。
「貰う方がいいつってんだろ。さっさと寄越せ」
しかしミナセは「や、やだよ!箱曲がってるし熨斗も汚れちゃったし、申し訳ないよ!」と頑なに箱を体の後ろに隠す。
やっぱりこいつ頑固だ。苛ついた俺はドアから離れミナセに近付く。「いいからとっとと渡せ!」と怒鳴り付けた。
「駄目!渡せません!」
「このっ…!」
「えっ?わあっ!」
解説すると。
俺がミナセの背に回った箱を奪い取ろうとした。その弾みで、ミナセがバランスを崩し後ろに倒れかかった。
地面はコンクリだ。やべえと直感して咄嗟にミナセの後頭部に手を伸ばしたが、奴の足が俺の脚に絡んで結局、一緒に倒れた。
…情けねぇ。
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