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傷・礼於side
「大丈夫レオくん!?ごめんね、怪我してない!?」
その後、こう繰り返すミナセ(怪我はねえみたいだった)を軽くあしらい俺は部屋に戻った。
ちなみに蕎麦は俺たちが倒れた時に無惨に潰れたので結局ミナセが持ち帰った。…無駄な争いだった。
ソファにどかっと座り込みテーブルのタバコを取る。一本くわえて火を点けフーと煙を吐いた。腕に自然と目が行きロンTをめくってみると、擦れて傷が出来ていた。うっすら血が滲んでやがる。
当然、さっきミナセを助けた時の傷だ。やっぱりな、と思っただけで特に何も治療しねぇ。慣れてるしな。
しかし今日は厄日だ。痴漢から助けた奴にしつこく追いすがられしかもそいつが隣の住人で挙げ句の果てにはホモ疑惑をかけられ。
やっぱ最初の痴漢の時に放っときゃよかったな。柄にもねぇことをするから面倒な目に遭う…ん?誰だ?
スマホが鳴った。
電話だ。タバコを灰皿に押し付け、画面もろくに見ずに出てみると。
『レオパイセ~~ンっ!!俺またフラれたっす~~!!!!』
耳元で大絶叫。後輩の中学生の鷹だ。
俺は舌打ちして「切るぞ」と冷たく言う。しかし『そんなぁ待って下さいっそんなクールなレオさんが好きっす!!』と鷹はマイペースだ。俺の周りにはマイペース野郎しかいねぇのか?
『俺、めっちゃ今回がんばったんすよ~!彼女、美人だから飽きられねえように小まめに貢いでたのに…。それなのに、他に好きな奴が出来たって今日いきなり言われて!はぁ…俺の何が駄目だったんすかね~…?』
鷹のこういう所は素直にスゲェと思う。俺は女が出来ても機嫌なんざ取らねぇ。アドバイスも出来ねえから黙って聞く。
『あーーもうトラウマっすよ!もう美人とは関り合いになりたくないっす!!』
そこは全面同意だ、鷹。
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