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翌日・礼於side

翌朝。俺はチャイムの音で目が覚めた。 誰だこんな朝っぱらから、と思って時計を見ると11時過ぎ。…春休み中じゃなかったら完全に遅刻だな。別にどうでもいいが。 欠伸をし、時間をかけて玄関まで向かう。訪問販売の奴だったら諦めるくらいの時間。 だが持ち前の野性の勘で、ドア向こうにはまだ人の気配があるのを悟った。 ーーまさか。 嫌な予感がした。 そう、昨日の疲労の元凶野郎。勘が俺にそう伝えてくる。 覗き穴で確かめてみると、レンズの向こうには案の定奴がいた。遠足当日の小学生みてえな目をこっちに向けている。 俺は居留守をしようと速攻決めた。鷹じゃねえが、あいつに関わるとロクな事がねえ。 部屋に戻ってまた寝るかと踵を返しかける。 が。 何となく後ろ髪を引かれる。 例えるなら、捨てられた子犬を無視して素通りする時の心境だ。 自分でも何やってんだとも思うが、もう一度覗き穴を確認する。するとレンズの中で眉をハの字にしたミナセが帰ろうか留まろうかウロウロしていた。 …やべえマジで子犬に見えてきた。 「…何の用だ」 色々負けた俺はドアを開ける。するとミナセは尻尾を振って「レオくん!」と破顔した。 いや奴に尻尾なんざ無えし落ち着け俺。 ミナセは「あの、これ」と持っていた箱を差し出した。「改めましてお蕎麦です!」 律儀な野郎だ。「ああ…」と受け取る。 新しい箱には綺麗な熨斗が貼られてあり、達筆な字(手書きだ)で『水無瀬睦月』と書かれてあった。 そうかムツキつってたな、と俺は奴の名前を思い出す。「ふつつかものですが、よろしくね」と微笑むミナセを横目で見ると、箱をツイと掲げた。そういや手打ち蕎麦とか食った事ねえから分かんなかったな。 「おい…コレってどうやって食うんだ」

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