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昼食・礼於side
「ふわぁ~っ、とろろ美味しい!レオくんがすり下ろしてくれたから一段と美味しいねぇ!レオくん天才!ネギも最高!!」
なわけねーだろ、と俺は蕎麦の汁を啜りながら冷静に突っ込む。山芋はどいつがすっても山芋だしネギはネギだ。こいつ誉めるのヘタクソか。
だがミナセはそんな俺の胸中など露知らず、心底嬉しそうにニコニコしている。「今日はちょっと肌寒いから掛け蕎麦にして正解だったね」と蕎麦をつるつる食う。
…なんかこいつの食い方上品だな。姿勢もいいし。
俺は今、成り行きでミナセの部屋で奴と昼飯(とろろ蕎麦)を食っている。
蕎麦と汁はミナセが作り、俺は山芋をすり下ろしネギを切った。
俺が手打ち蕎麦の食い方が分からなかったからだが…まさかダチでもねえ奴の部屋に上がることになるとは予想してなかった。…完全に流されてんな俺。
ーーん?
さっき座っていた時は気付かなかったが、ふと目を引くものがあった。
段ボールだらけの部屋の中、棚の上に飾られている小さなフォトフレーム。成人の男と女が二人、笑顔で映っている。女はミナセにそっくりだ。
「僕の両親だよ」
ミナセが俺の視線に気付いて説明した。
やっぱりそうか。「優しそうだな」と他意なくするりと言葉が出る。我ながら珍しい事だった。
するとミナセは一瞬、本当に一瞬だけ、指先にトゲが刺さったような顔をする。そして「ありがとう」とはにかんだ。
違和感を覚えるも「あ、レオくん!一味唐辛子と七味唐辛子あるけど、どっちか使う?」と問い掛けられ意識がそっちに引き寄せられる。
つか、一味と七味の違いが分からねえ…
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