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再会 後
あんなに温厚そうなメル様を怒らせてしまった。どうしよう。どうしたらいいんだろう。
使用人さんの後をトボトボと歩いていると、廊下の向こうから団長さんが歩いてきて、僕の姿を見つけると、駆け寄ってきてくれた。
「もう帰る時間だったか。すまん、気付かずに」
「……いえ」
「どうかしたか……?」
ううん。そんなこと考えてる場合じゃないよね。メル様の事、ちゃんと団長さんに話しておかないと。今は僕のするべきことをしなきゃ。
「あの、お話ししたいことが…」
「わかった。違う部屋に案内する」
一階にある応接室に案内されて、使用人さんが僕の前にお茶を置いた。その使用人さんが部屋を出たのを見計らって、僕は団長さんに話しかけた。
「あの、結界を張ることってできますか?」
「ああ、ここはそういった話をするための部屋だから、心配いらない。――早速話してくれるか?」
僕はそわそわしながらも頷いた。
「メル様は病気じゃないかもしれません」
「病気じゃない?」
「はい。体に悪いところが見当たりませんでした。だから考えられるのは外部からの、その、言いにくいんですけど、……呪術の可能性があります」
団長さんは少し驚いて目を見開いていたけれど、なるほどな、と言いながらため息を吐いた。
「そうか……。そこまで考えが及ばなかった。そりゃ、薬では治らんはずだな…」
「禁忌とされていますし、滅多にあることじゃないですから。…それで、部屋に遮魔防壁魔道具を置いています」
「遮魔、か…。流石、持ってるもんが凶悪だな。本当に助かる」
「これはメル様には秘密でお願いしますね。ちゃんと確認してからじゃないと、その…」
「わかってる。ありがとうな。メルの事、考えてもらって」
「そ、そんな、僕は……」
団長さんが目尻の皺を濃くして微笑んでる。にやっとした笑みじゃなくて、穏やかな笑み。
渋い微笑みって、かっこいい…。
もしかして、ぼさぼさの髪をどうにかして、この無精ひげ剃ったら男前なのかも、団長さん。
そうだよね、相手はメル様だもんね。きっとメル様にはこんな笑顔ばっかり見せてるんだろうな。考えるだけでこっちが照れちゃうよ。
「それから、確認のために、明日の昼にまたお邪魔させてもらうことになりました」
「わかった。明日も同じ時間でいいか?」
「はい。ただ、呪術だと僕にはどうすることもできなくて……」
「いや、それが分かっただけでも十分だ。お前さんに頼んだ甲斐があったな。……幸い、そっち方面に明るい知り合いがいるから、そこは安心してくれ」
流石、団長さん。顔が広い。
これでメル様は良くなるはず。
僕は胸をなでおろした。
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