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第1話

僕と文字眞司が出会ったのは、高校の入学式だった。 その頃にはもう僕は、自分の恋愛対象は男性のみである事を自覚していた。 …小学生の頃、同じクラスの男の子達がテレビの女性アイドルを話題にしたり同級生の女の子達を意識したりしている中、僕が気になったり意識したりする対象は常に同性である男の子達ばかり。 勿論、最初は悩んだし…女性を好きになる努力もしてみたけど…全て無駄に終わり…結局、自分の性癖を認識しただけだった。 だからといって、女性になりたいと思っていた訳でもない。 こんな事、誰にも…当然、家族にも…相談できるはずもなく…僕は自然と、皆と距離を置くようになり…その結果、友人と呼べる人物を作る事ができず…常に1人でいた僕は、クラスでも浮いた存在になっていた。 両親も同年代の男の子達とは違う僕より弟の方を可愛がり、僕は放っておかれた。 でも、僕はそれでよかった。 その方が、気が楽だった。 それが…高校の入学式で…眞司を始めて見た時…僕は目が離せなくなった。 まるで全身、雷に打たれたみたいな衝撃を受けた。 激しく眞司に惹きつけられた。 …今でも、どうしてこんなに強く眞司に惹きつけられたのか、分からない。 確かに、新入生の中でも、眞司は目立っていたけど。 背が高く、浅黒い肌、通った鼻筋、切れ長の目。 唇が薄いのが少し酷薄そうに見えるけど、笑うと若干、目尻に皺ができ、眉毛が下がって優しそうな顔になる。 そんな眞司に強く惹かれ、近付きたいと願った。 それがどんなに無謀で身の程知らずな行為か分かってはいても。 眞司は人気者で、周りにはいつも人がいた。 反対に僕は地味で目立たず、友人が1人も居ない。 まるで、正反対。 友人どころか、顔見知りになる事さえ難しい。 いつも皆と距離を置いて常に1人でいた僕は、まず、最近の話題についていけない。 皆が話している内容を聞いても、何を話しているのか、何が可笑しくて笑っているのか、僕には全く分からない。 僕と眞司の間に、接点は何もない。 おまけに放課後は近所の女子高校生が眞司を見ようと、校門に集まってくる。 …僕は知らなかったけど、眞司は中学時代、モテて有名だったらしい。 これでは、知り合いどころか、近付く事さえ難しい。 (友達になるなんて、夢の又夢だな…) 眞司と同じクラスになれたから、もしかしたら顔見知り位にはなれるかも…と思っていた僕は 厳しい現実を知り…眞司の姿を遠くから見る事で自分を慰めていた。 -だが、思わぬ事で僕は眞司と親しくなってしまう…。

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