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第5話

いきなりの出来事に本棚の陰から完全に出て行くタイミングを逃してしまった僕は、息を殺し、音をたてないように座り込んだ状態で固まっていた。 (まさか、本当にこの場所で始めるなんて…) 図書室には誰も居ないと思っているみたいだけど…僕が居るし…それに何より、ここ…学校の中だよ? 廊下に出たら、人が居るんだよ!? ………信じらんない……。 オマケに眞司と会長って………。 (…想像できない…) …だって、生徒会長っていったら…朝、全校集会くらいでしか見た事ないけど、いつもピシッと制服のブレザーを1分の隙もないくらいに着こなして…背が高くて、キリッとした佇まいと、いつも真っ直ぐに伸びた姿勢のいい背中が遠くから見ても綺麗で…マイクなんかなくても講堂の隅々まで響き渡る凜とした声で…皆が騒いでいた…格好いい、憧れるって…。 (それが…会長があんな甘えたような声を出すなんて…始めて聞いた…) オマケに…確か、生徒会長には男子の親衛隊がいるって噂があるけど…僕が知っている位だから、本当の事なんだろう。 (そんな会長と眞司が…?) オマケに。 眞司が男も女も、来る者拒まずだなんて…。 そんな事を知ったからといって、眞司と僕がどうにかなるはずもないけど…。 (…いや…そんな事より…) どうしよう…。 ますます出ていけなくなってしまった…。 (…いや、でも、誰も居ないと勘違いしたのは会長だし…僕は先にここに居て、会長達が来ることは知らなかったし…) 僕が固まって冷や汗を流している間にも…濡れた音と、くぐもった呻き声…肌と肌がぶつかり合うような音まで聞こえてきて…好奇心が疼いた僕は…いけない事だと思いつつ…本棚の陰からそっと顔を出し、2人を覗いて…。 …すぐに後悔。 覗かなければよかった…。 2人は図書室の床で、重なり合っていた。

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