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第8話
眞司は会長が服を着て図書室を出て行く時も、僕から視線を外さない。
そして図書室の扉が閉まると同時に、僕の方に近付いてくる。
僕は本棚の陰で蹲ったまま、近付いてくる眞司から目を離せない。
…あれ程憧れた眞司が目の前に居る。
僕を見て、僕の方へ近付いてくる。
僕の体は、緊張と恐怖に震えていた。
眞司は僕の目の前で立ち止まると、僕を見下ろし悪戯っぽく片目を瞑ると右手の人差し指を自分の唇に当てた。
「さっき見た事、誰にも秘密な?」
僕は眞司を見詰めたまま、コクコクと頷く。
(………………………………………?)
そのまま立ち去って行くだろうと思っていた眞司は、その場に立ったまま僕を見下ろしていた。
あれ程憧れて遠くから見詰めているだけだった眞司が今、目の前に居る。
目の前にいて、僕を見ている。
僕は緊張でガチガチに固まったまま、ギクシャクと眞司から視線を逸らした。
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