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第31話

「今夜、外に食事に行くから用意しろ」 「……………え」 今日は久し振りに眞司が部屋に来てくれた。 学校では眞司の姿を眺めているし、休み時間だって呼び出されたりしているけど…部屋に眞司が居るのは久し振り。 (こんな近くで眞司を見るのも、久し振り) 嬉しくて眞司の周りを用もないのに、ちょろちょろと動き回る。 珍しく、いつもなら煩いと怒る眞司が、怒らない。 (機嫌がいいのかな…) そう思うと、ますます嬉しくてニヤニヤと顔が弛んでしまう。 そんな僕に、眞司から言われた言葉。 『今夜、外に食事に行くから用意しろ』 一瞬、僕の希望や願望が幻聴となって聞こえたのかと思った。 「早くしろ」 「………うん!!」 初めて見た、眞司の笑顔。 僕に…僕だけに見せてくれた笑顔。 その事が嬉しくて。 忘れていたんだ。 眞司にとって僕は、ペットだという事を…。

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