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第10話
「あああぁっ」
大げさに仰け反った雛森が悲鳴を上げる。
「なに終わらせようとしてるの? 駄目だよ、僕まだイッてないから」
「待って、無理……今イッた、から無理」
「知ってる。で、それが何?」
黒い笑みを浮かべた南が下から覗き込んでくる。必死に息を吸い込む雛森の口端から垂れた涎を舐めとり、陶酔した瞳で囁いた。
「もっと嫌がって逃げなよ。簡単に捕まえちゃったら全然面白くない」
「ひっ、あ、やめろ……やめろっ、南」
「そうその調子。嫌いな僕に縋るしかないなんて可哀想な英良ちゃん」
嫌だ、やめろと首を振り逃げようとした雛森を南がベッドへと押し倒す。その両足首をしっかりと握り、大きく開かせた。
V字に晒されたことにより、射精して汚れた雛森の性器と、南を銜えて離さない後孔が露わになる。その間から雛森を見た南は、にっこりと蕩けるような甘い笑みで雛森の名前を呼んだ。
「英良ちゃん」
優しい声に優しい雰囲気。まるで愛を紡ぎ合う恋人同士のような関係に見えるが、真実はそれとは正反対だ。
南は挿入していた自身をゆっくりと抜き、膨張したカリを雛森の蕾の縁に当てる。
ひくん、ひくんと収縮を繰り返すそこを、じっと眺めていた南が顔を上げた。
その瞳を見た雛森の顔が引き攣る。
「いっ、嫌だ……やめ、ろ……やっめ──」
「それは無理なお願いだね」
笑顔で否した南は、ほぼ垂直から一息に雛森へと押し入った。
雷に打たれたように、大きく身体を跳ねさせた雛森の足が、ぴん、と伸びた後に弛緩する。
その甲に唇を寄せた南は、恭しく口付けを落とすと躊躇なく歯を突き立てた。
朦朧としていた雛森の意識が現実へと引きも出される。
「何呆けてんの? まだまだこれからでしょ」
既に二度も射精させられ、そのうち一度はところてん。もう雛森に余裕などない。持ち前の毒舌も頭には浮かぶのに言葉に出来ず、首を振って拒絶する雛森に南が微笑む。
「今までのは挨拶みたいなもの。ここからが本番のセックスだよ、英良ちゃん」
その黒い笑みに雛森は声にならない悲鳴を上げ続ける。朝方まで続いた南とのセックスは、雛森の体力を奪うだけでなく、精神的なダメージまで残して終わった。
それでも雛森が南との逢瀬をやめないのは、この行為で満たされる自分がいるから。そこに気持ちはなくとも南にしつこく求められた身体は、十分すぎるほど満足する。
そう、雛森と南は俗に言うセックスフレンドだ。
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