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第35話
「いいよ、先にこっちを済ませるから」
「あんた……っ、さっきから意味わかんないんだけど」
「そのうち嫌でもわかるよ。わかってもらわなきゃ困る」
肝心な部分を言わない南に、雛森は問いかけようとした。けれど、それは叶うことはなかった。
「はっ、ちょ、やめろ」
シーツに縫い留められていた雛森の両腕は頭上で一纏めにされる。
風呂上りに肩からかけていた薄いタオル。それで雛森を強く拘束した南が笑った。
その笑みは、南の闇に触れたことを雛森に告げていた。
固く締められた結び目は、雛森がどれだけ解こうと暴れても緩むことはない。それどころか余計に強度を増している気もする。
していることは同じはずなのに、身動きが出来ないだけで、こうも感じ方が違う。
全てを相手に委ねるセックスが雛森は苦手だ。
「はっ……ん、ん」
それなのに、心とは裏腹に雛森の身体は反応をみせる。
「いつもより声出てるね。英良ちゃんって縛られるのが好きなの?」
「誰、が」
雛森の胸の飾りを弄っていた南が顔を上げる。
そこはすっかりと濡れそぼり、赤い頂は艶めいていた。どれだけ吸われ、食まれたかなどもうわからない。
それほどまでに南は、雛森のそこを執拗に舐り倒した。
「アッ……」
尖った先端を指先で弾かれる。じん、とした疼きが身体を走り雛森は堪らず声を上げた。
それに気を良くした南が肩を震わせる。
「これからも、たまに縛ってあげようか? なんなら首輪も付けてあげるよ」
「この……変た……う、ぁっ」
「ほら、猫なら猫らしく啼きなよ。にゃーにゃー啼いてご主人様をその気にさせなきゃ」
何度も何度も弾かれた胸の飾りが、ひりひりと痛む。ぷっくりと膨れたそこに南が舌を這わせる度、痺れて仕方ない。
圧倒的な力の差。強引にねじ伏せられ、雛森は恥辱に顔を歪ませる。
「その顔いいね。英良ちゃんなら、さしずめ野良の黒猫ってところかな」
雛森の頬を下から上へと舐め上げた南は、くくっと喉を鳴らした。
至極楽しそうな男に雛森は唾を吐きかける。それは見事に南の頬へとかかり、親指でその唾液を拭った南が薄ら笑う。
「あー、すみません。俺、野良らしいんで躾なってなくて」
挑発した雛森はまさかの光景に瞠目した。それは、頬にかかった唾を拭った南が、その指を咥えたから。
卑猥なリップ音を立てて指を啜った南は、にっこりと微笑む。
「躾をするのは主人である僕の役目だからね。英良ちゃんは愛らしく僕の機嫌をとってくれればそれでいい」
「そんなの俺がするとでも?」
媚びへつらうことが大嫌いな雛森にとって、機嫌取りなんて死んでも御免だ。当然のように言い返すと、南は微笑みを崩さず答える。
「するんじゃなく、させるんだよ。僕は君を落とすよ」
自信満々に言い放った南が雛森の首元に顔を埋める。その付け根に強く吸いつき痕を残すと、満足そうに頷いた。
散々に弄ばれた胸元を越え、南が手を伸ばすのは雛森の下肢。生理現象で育ったそこへと触れる。
「へぇ……野良のわりに待ては出来るんだ? いい子」
僅かに先走りを滲ませた雛森のそれを南が握ると、更に膨らむ。まるで、ご主人様の帰りを待ち望んでいたかのようだ。
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