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第36話
「英良ちゃんのここ、待ちくたびれて涎垂らしてるね。可愛い」
雛森のそれを握った手が上下に動くと、ぐちぐちと先走りが擦れる音が鳴る。南の巧みな手淫に、雛森は意識を持っていかれまいと顔を背け、奥歯を噛みしめた。
溢れ出た透明の蜜が南の手も汚す。どんどん零れるそれに南の手の動きは早くなり、滑らかな指使いも相まって雛森は追い立てられていく。
「はっ……は、あっ、あ」
「もっと啼きなよ。じゃないと僕が満足できない」
「知らな、あ……くっ」
絶頂時のあの浮遊感がやってきて、雛森は腰を揺すって逃げようとした。
乳首と手淫だけで達するなんて、揶揄されるに決まっているから。それを理由に南が次に何を求めるのか、考えるだけでも恐ろしかった。
「あれ? まだ我慢するの?」
「は、あ、あっ……うるさ、い」
「相変わらず生意気。それなら……こっちに聞くからいいよ」
突如感じたそれ。秘められた雛森の後ろの窄みに、南が指を突き立てたのだ。
南は遠慮なく指の根元まで一気に咥えこませ、中に押し込んだそれを回転させる。すると、雛森の後孔は壁を引き攣らせた。
「あっ……うあっ、あぁ」
いくら指といっても久方ぶりに訪れた異物に、雛森は短い息を繰り返す。わなわなと小刻みに動く雛森の唇に、南がねっとりと吸いつく。
「美味しい?」
「あ、はぁっ……んんっ」
「ねぇ、ここに指挿れられて、そんなに嬉しい?」
ゆっくりと雛森の中を行き来する指が二本に増やされる。いつの間にか前への愛撫は止まっていて、雛森は後ろの窄みだけを重点的に溶かされていた。
解すのではなく、溶かすという表現が正しい指の往来。何が楽しいのか、一方的に快感を与える南は心うれしげに瞳を細める。
「すごいね、指が動く度に英良ちゃんのこれ、震えているんだけど」
「あぁっ、やめろ……さわ、るなっ」
天高くそそり立った雛森の陰茎の頭を南が撫でる。それだけで十分なほど雛森は感じ、あられもない声を上げた。
「やめ、やめろ……あっ、いや、だ」
「嫌じゃなくて、いいでしょ。本当はもうイきたいくせに」
「違うっ、俺は……はっ、違う」
首を振って雛森は否定する。それはいつもと同じパターンのはずなのに、南の眉間に皺が寄った。
楽しい遊びを強引に中断させられた子供のように、露骨に嫌な顔をし、雛森の中から指を引き抜く。
「あっ……あ」
指が出て行った蕾が伸縮をする。寂しいと言っているのか、小さく口を開いて何かを待っていた。
指よりも大きく硬く、深くまで満たしてくれるものを。
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