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第48話
真っ黒な笑みの南が口を開く。
「駆除をね、しようかと思って。身分不相応に騒ぎ立てる声が耳障りなんだよね」
「駆除?」
物騒な南の物言いに、アヤは器用に片眉だけを上げた。
向かいに座る南は、それはそれは楽しそうに肩を揺らして笑っている。まるで喜劇を見ているかのように楽しげな南が頷いた。
「向こうが変に小細工してくるなら、こっちは正攻法でいこうかと思って。しばらくうちの子荒れると思うけど手出さないでね」
「うちの子って……まだお前のもんじゃないだろ」
南の言う『うちの子』が、あの不愛想で仏頂面な部下のことだと瞬時に悟ったアヤは、南に呆れて返す。すると南は僅かに目を細めた。
「本当にアヤと英良ちゃんは、そういう関係じゃないんだよね? 僕を謀ろうとしていない?」
「してないって。電話でも言った通り、ヒナと俺が付き合ってたのは一ヶ月もないし、手だって出してない」
「それはそれで面白くないんだけどなあ」
ぼやいた南が、ふっと笑ってその唇を舐める。
何か良からぬことを考えているであろう南の顔つきを、アヤは頬杖をついて眺めた。口に出さないままで「こいつは本当におかしい」と思いながら。
アヤは、南が頭に浮かべていることを理解できてしまう自分が嫌だった。
「だってさ。アヤの身体を知っている英良ちゃんが、僕の下で善がってると思うと興奮しない?」
南の言葉に、アヤは乾いた笑いを漏らす。
雛森が南の本命だということは随分前から知っていて、雛森が心を許す自分を疎ましく思っているのは気づいていたが……その思考の行きつく先は理解の範疇を越える、そうアヤは思った。
「僕、別に過去のこととかどうでもいいし。英良ちゃんが誰と付き合って、誰とセックスしてようと気にならないからね」
「その割に千葉のこと気にしてたのは誰だよ」
「それは英良ちゃんが僕とそいつを間違うから。いつまでも過去を引きずって、悲劇のヒロインを演じているなんて英良ちゃんらしくない」
淡々と話す南には繊細さなど欠けらも無い。
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