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竜士という男2

「馬鹿。お前の話してただけだっての」 「えっ……!?」 思わず跳ね上がるように顔をあげ、目を見開いて竜士を凝視する。「お、俺の話……?」 「おう。あ、ちゃんと彼女って体で喋ってっから。……あの子も自分の体型に悩んでるって言ってたから、俺の彼女は最近ダイエットに成功したって話したら、そりゃあもう食いついてきて。お前のストイックさを尊敬するって言ってたぜ?」 何も言えず、口をあんぐりと開けるのみだった。……性別は誤魔化しこそすれ、竜士は自分のことを恋人として他人に話していたというのだ。あんなに楽しそうに。 信じられない。思わず、「嘘だ」と呟くも「嘘じゃねーよ」と否定されてしまった。 「まぁ、滅多に他人にお前の話はしねーけど、無性に喋りたくなる時があるっつーか……」 照れくさそうに口をへの字にする竜士に、瑛汰は非常に困惑する。……嘘だ、コイツは俺を都合のいい相手と思っているんじゃないのか。なのになんで、そんな顔をするんだ。それもまた演技なのか? いつもの三文芝居なのか? それとも、俺が大きな勘違いをしていて、コイツを疑っているのか? いや、そんな、まさか……。 胸のうちでそんなことをぐるぐると考えながら、依然竜士を見つめていた。すると彼は、今度はあからさまにむくれた顔と口調で瑛汰を責めてくる。 「なに? ってことはお前、もう一度太れば俺の心を引き留められるとか、んな馬鹿なこと考えてたわけ?」 ……図星だった。あまりの恥ずかしさに顔が熱くなっていくのが分かる。……あぁ、これは徹底的に馬鹿にされる。くどくど、チクチクと苛めてくるに違いない。 居た堪れず、竜士から顔を背けようとした。けれども、そうはさせないとばかりに顎を掴まれ、ぐいっとそちらを向かされてしまう。 竜士の不機嫌な表情が視界に映り、胸が抓られる思いだった。ころころと視線は揺れ、しまいにはビリヤード玉のように、すとんと下に落ちて動かなくなる。 「ほんっと、どうしようもねーくらい馬鹿だな」 「……うるさい」 こんな時でさえ、口から出てくるのは可愛げのない言葉だった。大きなため息が吹きかけられる。……あぁ、これでいよいよ愛想を尽かされてしまったか。そう思い、水面に沈んでいくように落胆する。 ……ここから出て行かなければ。言えずじまいだった言葉を、今ここで言わなければ。 彼との関係を、終わらさなければ――

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