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恋と嘘と現実とー16
病室の中からは楽しそうな笑い声が聞こえていた。
病室の扉は開いたままなので、中は丸見えだ。
そこには何を話しているのか、楽しそうな治夫と寧音。
病室には看護師もいて、治夫の血圧を計っていた。
「毎日、彼女がお見舞いに来てくれていいわね~」
その言葉に、治夫と寧音は顔を見合せて笑っている。
その様子を見ていた僕は…そのままその場を立ち去った。
逃げるように。
楽しそうに寧音と笑いあっていた治夫。
…そうだよ。
本当なら、それが普通で正常なんだ。
僕の事を思い出しても、いい事なんてひとつもない。
それなら、このままの方がいいのかもしれない。
僕の事を思い出さないままの方が…。
その方が治夫の為なのかも…。
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