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瞳の中、君にー1
―気付いたら病院のベッドの中だった。
「…気が付いた?」
心配そうに俺の顔を見下ろす両親。
「…ここは…?」
起き上がろうとして、母親に慌てて止められる。
「病院よ。治夫、車に跳ねられて大怪我をして…」
涙を流して言葉を詰まらす母親。
車に跳ねられて大怪我…?
憶えてない。
全然。
全く。
その時の記憶が、ない。
「…でも、よかったわ。助かって」
涙を流して喜ぶ母親。。
「…どうして…車に…?」
「…憶えてないの…?」
母親の質問に黙って頷く俺。
「…そうか…」
戸惑う母親のかわりに、父親が答える。
「…まあ、事故のショックで事故直後の記憶を無くすという話は聞いた事があるからな…よくは分からないが、お前は隼人君を庇って車に跳ねられたらしい」
………隼人……?
って、誰?……そう聞こうとして口を開いた時、病室の扉が開いた。
そこには―。
「…寧音」
同じクラスの寧音が立っていた。
「…あ…私…治夫の意識が…戻ったって聞いて…それで…」
走って来たのか、息を切らせている。
そして俺を見ると、嬉しそうに笑った。
多分、寧音に惚れているクラスの奴等が見たら、ドキッとしてしまうような素敵な笑顔。
だが…。
寧音に惚れていない俺は、どうして寧音がここに来たのか、分からず戸惑った。
俺と寧音は、同じクラス。
それ以下でも、それ以上でもない。
俺の見舞いに来るほど親しくもないのに。
その寧音が、何故、ここに来ているのか?
…いや…それより…。
「…隼人って…誰?」
俺のその言葉に、両親も寧音も驚いた顔をして俺を見た。
「…え…っ…何?」
…そんなに驚く事か…?
と思ったが…。
それからが大変だった。
母親が先生と看護師を連れて来て―。
色々、検査をさせられた。
―結果―。
脳に異常は見られず。
当たり前。
俺は、至って正常だ。
俺自身の記憶に欠けているモノなど何もない。
それなのに、両親は困惑した眼差しで俺を見るばかり。
理由を聞いても、答えてくれない。
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