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瞳の中、君にー2

―分からない事ばかりだ―。 一時的な記憶喪失だと言われても、俺には実感がない。 自分の名前も言えるし、両親の顔も分かる。 友人の名前だって言える。 昔の事も思い出す事ができる。 それなのに、記憶喪失なんて言われても…。 実感が湧かない。 そんな時だった。 彼が病室に来たのは。 息を切らし。 顔を紅潮させて。 病室の扉を開けた。 俺の名前を叫びながら。 そんな彼の姿を見た瞬間―。 何故だろう。 知らない顔なのに…。 泣きたい程、懐かしく…嬉しい…そんな気持ちが広がり…やっと会えた…そんな言葉が頭に浮かんだ。 それなのに。 「……君…誰?」 彼の名前を知りたくて、出た言葉。 その言葉に彼は立ち止まり、驚いたように目を見開いて俺を見た。 まるで…信じられない言葉を聞いたように…。 ―しまった―。 そう思った時にはもう遅く、彼はクルリと体を反転させると、あっという間に走り去っていった―。 呼び止めようにも、彼の名前を俺は知らない。 彼を追いかけようにも、怪我の治っていない体はベッドから動かす事もできないまま。

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