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瞳の中、君にー3
―彼が、失った俺の記憶の人物…幼馴染みで、親友だと聞かされたのは、その後だった。
その話を聞かされてから俺は、彼がもう一度、病室を訪れてくれるのを待った。
が、彼は来ない。
関係ない人物は毎日、来るのに。
関係のない人物。
そう。
俺には彼女が何故、俺の見舞いに来るのか分からない。
俺の意識が戻った当初から、寧音は毎日、俺の見舞いに来て、面会時間終了まで当然のように俺の病室に居る。
それとなく帰るように促しても、分かっているのかいないのかなかなか、帰らないし。
「…隼人が来たの?」
いつものように見舞いに来た寧音は開口一番、そう聞いてきた。
「…ん?ああ、1回だけ…何、彼の事を知っているのか?」
知っているのなら、彼の事を色々と聞こう。
そう、思ったが。
「……………」
寧音は怖い顔をして、黙ってしまった。
…どうしたんだろう?
いつもは、よくそんなに話題があるなと思う程、喋りっぱなしなのに。
…そういえば…。
寧音の口から、彼の名前を聞いた事が一度もない。
その事に、今、気付く。
「…あのさ…」
「ごめんね」
「………え?」
沈黙に耐えきれず、口を開けば…寧音にいきなり謝られた。
「ごめん…彼の事、今まで黙っていて…何て話したらいいのか分からなくて…」
「…ああ…隼人、だっけ?母親から聞いた。俺の幼馴染みで親友だったんだろ」
「…うん…でも、それだけじゃないの。実は私と治夫、付き合っていたの…覚えてない?」
「………え!?」
…付き合っていた…?
俺と寧音が…?
「……いつ…?」
「…やっぱり、憶えてないのね…」
驚いて思わず口にした問いかけに、寧音は少し哀しそうな顔をする。
…いやいや…憶えてないっていうか…全く、記憶にないんだけど。
俺が記憶喪失なのって…隼人に関する記憶だけだよな…。
「…私…治夫と付き合う前…隼人と付き合っていたから…」
「………え!?」
…それって…俺が隼人から寧音を取ったって事か!?
俺が!?
嘘だろ!?
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