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いつか、君の声が-21

「………K大へ行く事に決めたから」 -それは、僕を抱き締め、ベッドに押し倒す時にも言われた言葉- もう一度言われたその言葉に、毛布を身体に巻き付け、ベッド下に脱ぎ捨てられていた下着を拾っていた僕の手が一瞬、止まった。 「………うん、知ってる」 でも、手を止めたのは一瞬だけ。 すぐ下着を拾い、毛布の中へ潜り込み直すと、もぞもぞと着込み始める。 毛布に包まったまま、四苦八苦しながら服を着ている僕を、僕のすぐ横で真っ裸の治夫(目のやり場に困る)が見ている。 ……………分かっているさ。 ………先刻まで2人して裸で抱き合っていたのに、今更、裸の姿を見られるのが恥ずかしいなんて何を言ってるんだ…って呆れているんだろう。 確かに、あんな姿やそんな姿を見せといて今更…とは僕も思うよ……思うけど…しようがないじゃないか。 (………恥ずかしいんだよ) ………治夫に比べると、僕の身体は貧弱だし、腹筋も治夫みたいに割れてないし…ふにゃふにゃだし………。 「…だから…大学を卒業するまでの4年間、お互い連絡しないでおこう」 先刻までの自分の痴態を思い出して紅くなったり、治夫の身体と自分の身体を比べて落ち込んだりしていた僕は、治夫の言葉で我に返った。 反射的に治夫の顔を見る。 でも、それは治夫の言葉に驚いたからじゃない。 ………なんとなく、治夫がそう言うだろうと予感していたから、驚きはしなかった。 多分、それは僕の為。 病院から退院したのに僕に連絡を入れなかったのも、僕に会いたくないなんて言ったのも、女性と遊んでいる振りをしたのも………僕の為に、僕が迷わないように、僕から離れようとして…でも、無駄だから。 総てお見通しだから。 ていうか、バレバレだから。 特に女性と遊んでいる振りなんか、治夫には似合わないから。 無理だよ。 治夫が僕を好きな事はもう、知ってるから。 「……………4年間かぁ~」 思わず呟く。 でも、治夫が僕をずっと好きでいてくれた年数を思えば………。 全然、短いし。

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