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いつか、君の声が-22

『…大学を卒業するまでの4年間、お互い連絡しないでおこう』 -分かっている。 いくら鈍い僕にだって分かるさ。 寧音が又、治夫に何かしたんだろう。 いつも、ちょっかいをかけてくる寧音を軽く躱している治夫が僕から離れようとする程の事を。 寧音の事だ。 なりふり構わず、僕達を別れさせようとする。 ………でも、僕は寧音を治夫ほど、嫌いになれない。 僕の初恋の相手っていう事もあるけど。 確かに治夫の事には少し……………いや、大分(?)危ないっていうか、危険人物っていうか、ストーカーじみているっていうか、もはや、ストーカー以外の何者でもないけど。 でも、それだって治夫の事を好きだからだと思うし。 治夫はそんな寧音を、欲しいモノが手に入らなくて泣き喚いている子供だから、治夫の事が本当に好きな訳じゃないって言ってるけど。 そんな事はない。 寧音は本当に、治夫の事が好きなんだと思う。 好きなのに、自分の事を見てくれないから…って事じゃないかな。 好きな相手に自分を見てほしくて。 寧音ってプライドが高いし、分かりづらいんだよな。 治夫は頭は良くて結構、鋭いんだけど、変な所抜けているから…。 結果、寧音の好きは治夫に伝わらず、寧音の思いだけが空回りしているみたいに見える。 寧音のそういう一生懸命しているのに報われなくて、地団駄踏んでいるところなんか見ていると、やっぱり可愛いよな…とか思ったりするけど。 治夫も寧音のそんな一途なところを知ったら、もう少し寧音に対する態度を軟化させると思うんだけど。 そして、昔の僕だったら治夫にこっそり耳打ちして教えてあげたかもしれないけど。 ………………………………………………………。 教えてあげない。 僕は治夫が思うほど、お人好しでも優しくもない。 僕だって、治夫が好きなんだから。 『………大学を卒業するまでの4年間、お互い連絡をしないでおこう』 -4年間………。 そしたら、お互い親から離れて独立する。 今は未成年で学生だし、親に迷惑かけるわけにはいかない。 おまけに今の僕じゃ、治夫と一緒に歩んで行くには力不足だ。 足手まといになる。 でも。 大学を卒業して社会人になれば…。 甘い考えかもしれない。 世の中はそんなに甘くないかもしれない。 -4年。 自分を鍛えるにはいい機会かもしれない。 治夫と離れて、誰にも頼らず一人で。 『………大学を卒業するまでの4年間、お互い連絡しないでおこう』 そして-。 『………そしてもし、大学を卒業しても俺の事を好きでいてくれたなら、その時は-』 当たり前だっ!! 今よりいい男になって、治夫を惚れ直させてやるっ!! 待ってろよ!!

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