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泣かないで、マイ・ラブ-12
美人は睨むと怖さ迫力、共に2割増しになるらしい。
彼女に睨まれたのは私じゃないのに、迫力のある彼女の睨みに何故か、私の方が石になってしまった。
それなのに。
「知ってるよ」
私の肩を抱いたままの治夫が平然と答える。
「俺が最低なんて、今更だろ?」
妙な緊張感。
「…私や彼女の気持ちを知っていて、そんな嘘……そこまでして………」
何の話をしているのかは分からなかったけど、彼女というのが私の事だという事はなんとなく理解できた。
少しの間、唇を噛んで治夫を睨んでいた彼女が私に視線を移してきて。
「………許さないから!!」
捨て台詞を吐いて、去って行く後ろ姿。
その後ろ姿をぼんやりと見送っていた私は。
「………ごめんね」
すぐ横で聞こえた治夫の柔らかい声にハッと我に返る。
そして。
横を向くと眩しい笑顔。
(……………尊い………………)
その笑顔だけで何でも許してしまえる。
てか、許す。
………………………ん?
(………許す前に………私は何を謝られているの?)
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