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8-媚薬

帰宅すると、宅配便が来ていた。 小包みを渡され、中を開けると梱包材に包まれた小瓶。ラベルには取扱注意の文字。 なるほど、確かに俺が頼んだものだ。 これは、媚薬である。 今まで“玩具”は使ってきたが、媚薬は初めて。そもそも、Ωは媚薬を必要としない人種と言われているのだ。 Ωは3ヶ月に一度訪れる発情期の一週間、強い催淫効果のあるフェロモンを発する。 それが他の人にとっての媚薬だし、本人も発情して媚薬みたいな状態だから…媚薬みたいな状態ってなんだよ。 ともかく、使う理由がないのだ。 今回ネットで買おうとした時も女性用とかβ用はあったが、Ω用はなかった。単純に人口比率的な需要の問題かもしれない。 仮に似た効果がある物でΩが使用するなら、例えば発情誘発剤。子作りを計画的にしたい時なんかに使われるらしい。ヒートを楽しむ目的で使われることもある。もっとも、病院にかからなければ処方はされない物だ。 俺が使おうとしているのは、媚薬。Ωに媚薬。シャカにセッポウ。人に見られたらコイツ頭おかしいの?とでも言われそうな組み合わせだが、気になるものは気になる。というか単純に効くのかどうか確かめたかった。 ぶっちゃけ期待値は低い。せいぜい一人エッチの刺激になる程度にエロい気分になれれたら儲け物だね。 試しに手に出してみると、ショッキングピンクの細長い錠剤が転げ出る。思った以上に毒々しい色に驚く。 色のある薬なんかカプセル以外初めて見たぞ。本当に効果あるのか?胡散臭さがハンパない。 効果が出るまで30分とあるので、そのまま規定量の3倍の12粒ほどを口に放り込む。 舌に乗せると無味、一粒噛み砕いてみたら、ほの甘苦いようななんとも言えない味。 一応、安全でβから評判がいいヤツをチョイスしたはずだ。カノジョがノリノリでエッチしてくれましたー、とか。濡れやすくなりましたー、とか、口コミを見て。 時間があるし、風呂に入って時間を潰す。 期待していないとはいえ少しワクワクしてくる。 丁寧に体を洗い、ゆっくりと湯船に浸かり、30分、1時間… 首を傾げる。体調に何ら変化も無く、というより逆上せてしまったので湯船から上がる。 「ダメか」 茹でダコの体をバスタオルで包むと、無意識に溜息が漏れた。ダメ元ではあったけど、まったく効果がないとは。 毛長のパイル地で手足を拭いていくのは、ゴワゴワとした肌触りが気持ちがいい。残念ではあるけれども、長風呂できたし、体が芯から温まっていて悪くない気分だ。この後シコって寝るか。 しかしそれもつかの間、すぐに考えを改めることになった。尻部分を拭いたとき、布ごしの肌を摩擦なくヌルンと滑る感触。 「あれれ」

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