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8-媚薬

やべえ、シヌ、死んじゃう。 あ、あー、あ。背筋が震えてイッた。発情期中の絶頂は刺激が普段の数倍になる。 頭がブッ飛びそうになるのを必死で堪えて、移動。 「あっはっあっあ、あ、、あ」 数歩分ズレた所でまた絶頂。腕がカクリと折れて床に頰をつける。冷たすぎる床は痛いほどで、肌が触れているだけでゾワゾワとそこから悪寒に似た刺激が俺の中に侵入してくる。動かないのもツライ。無意味にキッチンの埃とかが視界に入って、生っぽい匂いがふわりと香る。 「ひ…ん、ひ、んん…っ…んっぃ、ん」 半泣きで手を後ろに伸ばしてケツを掻き回す。ナカは熱くて、トロトロに溶けている。腸壁を力の抜けた指が細かく擦り上げるだけで、腰と頭がフワフワと浮き上がってぐちゃぐちゃに混ぜ合わされて、悲鳴が漏れる。 「はぁっふぅっ、うう、うーーーっ…うぁ…っああっ」 頭がスパークして体が跳ねる。腰が揺れる、ちんこが床に擦れてイタイ、きもちいい。 何も考えられなくなってくる。 なんで?媚薬だったんじゃねーの? 急に遅れて疑問が浮かんでくる。けど、そんな場合じゃない。 体を起こそうとすると、冷や汗がドッと噴き出す。 俺の体が脳みその方から溶けてなくなってって、ぐるぐる鍋の中でまわってシチューになる。 コワイ。逃げようと手足を動かして、また頭がピカピカ白んで雷が落ちる。嬌声というより悲鳴が口をついて出る。 「あっぁっあーーー!〜〜っ!!よくせーざ、い、ひ、ひゅ」 腰が自分の物じゃないみたいに揺れて床にちんこを擦り付けまくる。フローリングは滑るから、あんまりシゲキが来ない。もちろん気持ちいいけど、ゴリゴリ、ビカビカが欲しい。欲求が満たせないのが悲しくて、涙がボロボロ溢れる。 中を掻き回す指はお利口さんで、なけなしに残った理性が前立腺を避ける。触ったらヤバイって本能で分かってる。 次から次へと沸き上がる快楽に侵されながら、気を振り絞って指を引き抜く。泥のような体を動かしてキッチンのカウンターに縋り付いて体を持ち上げ、そこに無造作に置かれている注射器をひっ掴む。 これは、非常時に使うやつ。フェロモンと発情がちょっと治るやつ。俺はあんまり効かない体質だけど、無いよりはマシ。 注射器のカバーを外して、腕を出す。 か細く震える呼吸と、心臓が、うるさい。手が震えて、目の前が歪んで針先がなんども腕を空振る。内側に溜まっていく欲求ばかり膨れ上がって、今にも破裂しそうだ。 はやく、はやく、打って、打って。 いいじゃん、αなんかこんな所こねーし好きに遊んじゃえば、と脳みそが囁く。バカ、打たないと明日が大変に…あしたってイツ? 何もしていないのに、三度目の絶頂。 目眩、黒目がグル、と上を向いて、天井が一瞬見える。 ああ、白い電球が眩しい。 意識が一瞬トんだらしい。世界に引き戻されて目にしたのは、顔と同じ目線で一面に広がる床と、離れた場所に転がる、プッシュ済みで薬液が床にこぼれた注射器。鈍く頭がいたいのは、打ったからか。 あーそうか。そうだよな。うん、知ってた。 非常用のはもう一つ寝室にあるけど、そこまで行く気力はない。

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