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10-ごはん

「めっちゃオイシーですこれ」 「よかった。ちょっとがんばってみました!」 俺が今頬張っているのは、クリームコロッケ。そしてそれは、山本先生の手作りである。 誘ってもいいですか、とわざわざお伺いを立ててきたサシ飲みの日以降、多少仲良くなったことは自覚している。 なんと言ってもキズナのかけ橋?となったのはあの媚薬で俺がアッポーパイになった事件で、その翌日すこぶる調子が悪かった俺を山本先生が介護…サポートしてくれたからだった。 のど飴をくれたり、弁当を分けてくれたり、配るプリントの束を運ぶの手伝ってくれたり。準備室から用具を取り出したり。細々とした力仕事的なのを最初2日はよくもまあそんなに気が回る、俺に張り付きってレベルで気を配ってくださり、物凄く助かった。 正直な話山本先生には、なぜ体調が悪いのか勘付かれてしまったかもしれない。なんも言われてないけどな。 しかしそのありがたい期間のおかげで、調子が戻る頃には彼の弁当のおかずを心待ちにしてしまうほどには“餌付け”されてしまっているという、情けない結果に。 残りのコロッケを口に放りこみつつ長机の休憩所の隣席を見ると、嬉しそうな顔で自分の弁当を食らう大男。 この男、2日目には自分の弁当の他に俺の分のタッパーまで用意していた。くれるメシはなんでも旨いし、大体、そんなことしてくれる相手にイラナイなんて、言えるはずがない。職場の同僚だぞ。そうだ、しかたがなかった。 体が完治してからは俺が昼食をコンビニで買うようになって、そうしたら完全な弁当ではなくオカズをいくつかくれるという形式へとすんなりと移行し、継続。 このコロッケも、なんたって、勧めてくるんだからしかたないよなあ? 「でも手伝ったり物もらってばっかりでちょっと気がひけるよな」 「あ、それでしたら三橋先生。バレー部のユニフォームのデザインを考えてもらえませんか?」 「んあ?」 知らずに声に出ていたらしい。慌てて隣を見ると、無害そうなパッチリ目と視線が絡む。 えーと、なんだっけ。ユニフォーム? 「フルオーダーで作るんすか?そしたらちょっとお値段張っちゃいそうなもんですけど」 「今使ってるのが安い量産品なんで、いいんですよ。上にも掛け合ってるところなんです。生徒からデザインカスタムできるサイトで案を募るつもりだったんですが、どうせならウチらしさが出てる方がいいと思うんです」 へえー。スポーツ業界のことはよく分からないが、そういうもんなのか。たしかにどうせなら動きやすくてカッコイイ方がいいよなあ。なるほど。

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