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11-電車

ガタンガタン、と車内が揺れる。 「……」 今日は、受験関連の説明会だとかで、午後から職場を早引け。 都内へ出向いて、説明会が終わり、時刻はちょうど帰宅ラッシュ。 人の流れに詰め込まれるように電車の中に乗り込めたのは良かったが、いかんせん人の密度が高くて身動きするのも申し訳ないほど。 「…。……」 手が入っている、スラックスの中に。 自分のものではない。誰のものかは、分からない。人の陰に阻まれていて、視認が難しい状態だ。 たまに、こういうことがある。 普段徒歩通勤のために、リスクに考えが及ばなかった。 満員電車の中は人でひしめいているくせに、やけに静か。 「っ、」 乗車してすぐにコレ。素早くて、直接素肌をさわられてやっと気付いた体たらくだ。手慣れている。 手が前に回って、俺の小ぶりなソンを撫で回される。 部位が部位なだけに反応してしまうんだよなあ。どうすんの、俺が勃ったら前のヒトに当たってヘンタイ、チカン!とか言われんのかなあ。 手を服からつかみ出そうと腕を動かす。そもそも、自分の手がどこにあるのかもよく分かってねーけど。 ついにちんこを握って弄られ始めた。手の平の皮がゴツい。俺ビンカンだっつってんだろ、クソ。 「…、…」 うおー、ムリ。普通に気持ちいいしやめてほしい。表情を保つのがやっとだ。ようやくそれらしきスーツっぽい布地に包まれた腕を掴むが、ビクともしない。 はあ?別に極端に力が弱いって訳じゃないだろ。 腕が太くて掴み出すには難儀だな。体格差を利用したチカンってか。ムカついて腕の皮をこれでもかとつねる。 「ッた、ちょっと」 「ぁ、……すいません」 違う人だったらしい。付近から声が上がる。 すでに顔から火が出そうなほど恥ずかしい。 これで誰か気付いてくれていたら良かったのに、いや、状況的に情けないにもほどがあるな。こんな満員電車でチカンですなんて言ったってコイツを隔離できる訳でもない。大人しくしとくのが吉か。 相変わらず息子をいじる手は止まらない。つーかイきそう。なんで特急なんだよ。 膝が震えて体がずり下がったのに気付いたか、足が股に割って入り込む。覆い被さるように立たれて、後ろの奴だと判明した。 「っ…」 「早かったね」 射精したとたん低く耳元で囁かれる。 オエ、気持ちわり。 あー、着いたら警察に突き出してやる。 「オメガ」 ケツまで触られて、微かに独り言のような囁きが鼓膜を揺らす。ゾワリと悪寒が走って体が強張る。 手が後ろに回り、穴に指を入れられる。 外が寒いせいで指まで冷たい。生理反応と嫌悪とでキュッと尻が締まる。

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