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11-電車
背筋を伸ばしこれでもかとケツを引き締め指を拒みにかかるが、尻たぶに挟まれた手はしぶとく中を抉ってくる。
あー、だめだめ、そこはダメ。
前立腺を探り当てられて腰が跳ねる。前立腺て、けっこう浅いところにあるから簡単に触れんだよなあ。
「っ」
唇が戦慄き、唇を噛む。あーあー、ガマンガマン。あとちょっと、あとちょっと。
指が深く入って荒く引っ掻かれる。鈍い痛み。そのまま指を増やされていくけど、焦りしかない。視線をうろつかせてだれか気付いていないか探す。みんなスマホ。
無理矢理でも顔を確認してやろうと振り返った瞬間ピンコーン、ピンコーン。駅に着いて人の詰めホーダイの中身が変動する。失敗。
人に揉まれているだろうに、中の指がググ、と中で好きに動く。マジで気持ちワリイ。
降りんだよ俺。降りさせて。バカ中央に詰め込まれてしまったばかりに人を押しのけて出ることになる。力の抜けた手足を動かしてみるが、腰をガッチリ掴まれてしまった。同時に軽い絶頂が来て前の人にもたれる形に。
前のヒトが振り返った。スーツの背が高い若い男性。俺の顔を見てびっくりしたみたいに目がまたたいて、元に戻る。また人が詰め込まれるのに合わせてこちらを向いて、俺はその人の胸部分を見ることになる。
「はっはっ…」
扉が閉まった。
絶望感を滲ませて閉まる扉を見送る。
あんまりにも俺が死にそうな顔をしていたみたいで、具合が悪いと思ったのか、その人はもたれさせてくれた。
社会人てのは例外なく汗臭い、ワイシャツの白い色に視界を塞がれつつ、尻を弄る指を排除しようと手をやる。自分の腰から生えてる腕だろ、今度は間違えない。
触感で辿りしっかりと探し当て、グイと引っ張る。さっき間違えた人よりは細い腕だ。しかし、ビクともしない。
向こうが強いんじゃない、俺が力弱すぎ。
「っ、ん、〜〜…、…、」
電車の揺れに揺られているフリをして体を捩るが、効果もない。
濡れていなければ中に何か入れると引き攣れるような感じがするけど、それがないあたり、濡れてしまっている。
一回イったし、触られ続ければ感じてしまうのが性。
前にも手が伸びた。視線を下げると、もたれかからせてくれていた若者の手が俺のずり落ちそうなスラックスの中に消えている。お前もか。
的確に亀頭を包み容赦なく擦られて腰が逃げる。と、頭が白くトんで絶頂。
どさくさに紛れて別の腕が増えて、尻や太ももを撫で回される。みんな男色かよ。
ああ、だめだ。もう、俺じゃ捕まえらんない。
「ち」
今にも崩折れそうな体を支えるのは、二人がかり。ふわふわと脳髄が白いまま顔を無理矢理上げ、口を開く。出した声がまるで吐息みたいに掠れる。
「か」
「君が誘惑した。誰も取り合わないよ」
「……、は」
景色が、飛ぶように流れていく。
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