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12-早退
「え゛っどうしたんですかソレ」
校門をくぐる頃には、登校中の生徒に痛いほどの視線を浴びてしまっていた。
腰をかばって歩く俺を見つけてすぐさま飛んでくる山本先生は、流石の好青年ぷり。
「あいや、その、転んだ上に風邪…みたいな?」
「そんな満身創痍で大丈夫なんですか?授業できます?病院寄るなら、オレ言っときましょうか」
「今日はちょっと早めに上がらせていただきたいですね」
出した声がまたカスカスなもんで、やけに真剣な顔をして山本先生は俺の額に手を当ててくる。
手が冷たい…ってか、フツーにアレだよな、それ冬だから冷たいだけだし、やっぱ俺、熱はないよなー。
「なんか手伝うことあったら何でも言ってくださいね」
「あ、はい」
ま、今日はずっと座ってるだけにしよう。どのみち授業も生徒が個人作業するだけだしな。
てな訳で、授業も午後に差し掛かったんだけれども、今度は腹の調子が悪い。
腹痛いし、腰痛いし、あーー。
おかしいなあ、マジで、なんか変なもの食ったっけ?
はぁ、クソ。クソクソクソ。
仕方なくトイレに立つ。
出ない。なんなんだ。
トイレに立ったり座ったりしているうちに、夕方になった。
体調絶不調ゆえ、早退しますと言ったらあっさりと許可が出たため、そのままタクシーで帰宅。
とはいえ、腰の痛みも結構マシになった。
まだ明るいうちから家に帰るなんて久しぶりで、悪いことでもしたような気分だ。
我が家に着き、ほっぽりだしたままのタオルなどを回収。
ついでに汚れなどもチェック。
懸念通り、えらいカピカピのソファのカバーを外して洗濯機にぶち込む。
床に落ちた汚れなんかも拭き取る。
「あー…腰イテ…痛つつぅ…」
腰をさすりながら粘っていると、床に落ちたレシートが目に入った。
つまみ上げると、裏に、見慣れない筆跡。
「う゛っ…!?」
そこには一言、「鍵は閉めること」と書いてあった。
猛烈なαの匂いを纏って。
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