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14-なろう

絶妙に砕けた言葉遣いは、人に接し慣れているような印象を受ける。 男はそのままゆるりと俺の肩を抱いて、俺が元来た道を引き返していく。 オイオイ。よく分からないまま変なことになってっけど!? 俺がその場に踏みとどまると、一緒にたたらを踏んで一度立ち止まる。 その際、ふわりと今度は淡くフェロモンが香る。 「すみません。今、尾けられてるんです。あそこの彼女」 少しこちらに顔を寄せ、男が早口で呟く。 彼女、の部分は軽く顎をしゃくっている。 少し振り返ってみると、なるほど、少し離れた所で、こちらに顔を向けて歩く女性がいる。 「マジすか」 「マジっす。後でお礼するので、友達のフリしてもらえませんかね?」 怪しすぎる。 新手の宗教勧誘とか、ナンパとか、もしかしたらヤのつく職業の人とか、そういう危ない思考が頭に浮かんで止まんねーぞ。 そもそも、肩に乗った腕も力強くてなんか怖えし、断らない理由がない。 「本当にすみません。詳しいことは後で話すので」 俺の気持ちとは裏腹に、男がソワソワと体をゆする。 瞳は背後をチラチラと落ち着きなく伺っていて、本当に焦っているみたいだ。 ヨシ、分かった。このあたりはよく知ってるし、ちょっと付き合って危なくなったら逃げればいい。 そう心に決めたのが後か先か、グイと肩を強めに押され、2人で足早に歩き始める。 「どうしたのこんなところで!久しぶりだね。どこかで話そうか?俺奢るよぉ!」 男が声を大きめに張り上げる。 そして、歩く速度も上がる。ちょっとした小走りくらいのスピードは出ていそうだ。後ろもほとんど振り返らないまま、マンション付近の通りを離れて、角を何度か曲がったりする。 気がつくと、繁華街から少し離れた喫茶店に入っていた。 一言トイレとだけ言って窓際まで進んで、なにやら確認を済ませた男は、店内の席の一番奥の方を選び、着ていた上着を脱いだ。 そして、運ばれてきた水を一口運んで深い溜息をつく。 「…はぁ、参った。助かりました。」 「もう振り切れましたかね」 「うん、いや…。とりあえず、一杯奢らせてください…」 疲れを滲ませるその様子を見る限り、嘘をついているようにも見えない。 2人の間に何があったにしろ俺は赤の他人、この突然の逃走劇に少し楽しくなってきていた。

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