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核心を突いてようやく気付いたのか、パッと顔を上げた葉璃は真っ赤な瞳で聖南を見詰める。
「俺の事どうでもいいなら、葉璃は今ここにいないと思うけど」
「…………そう、ですね」
葉璃はまだ高校生で、しかもこんなに恵まれた容姿を持ちながら驚くほどに卑屈な性格なので、下を向いて歩いてきた彼の人生で色恋沙汰など皆無だったのだろう。
好きになるという気持ちすらも知らない、真っさらで綺麗な葉璃の心にすでに聖南が入り込めたのなら、絶対に逃してなんかやらないと畳み掛ける。
「俺の事信じられないなら、これからいくらでも信じさせてやる。 だから葉璃も俺を不安にさせるな。 いいな?」
「……はい」
「俺は昔の俺じゃない。 こんな仕事してっから周りから色々嫌な事も聞くかもしれないけど、葉璃は俺の言葉だけ信じてろ」
「…………いいんですか、ほんとに俺で」
「まだ言うか」
このお子さまは付ける薬がない。
聖南は惑う葉璃の両頬を挟んで引き寄せ、おでこをくっつけ合わせた。
想いをそのままぶつけようと、超至近距離で葉璃の瞳を見詰める。
「好きだよ、葉璃。 ……葉璃は? 言ってくれねぇの?」
問うと、触れた頬がみるみる紅く熱くなってきた。
言わなきゃダメですか?と瞳で訴えてきたので、聖南は小さく頷く。
「………………好きです」
蚊の鳴くような小さな声で震えながら言う葉璃の緊張感が、触れ合った場所から直に伝わってくる。
その初で可愛すぎる告白に、聖南が耐えられるはずがなかった。
「んっ」
チュッと触れるだけのキスをしてすぐに解放してやると、葉璃はビクッと硬直し、耳まで真っ赤に染め上げて窓の向こうの景色を見詰めた。
その横顔を見ていると、柄にもなく聖南も照れてしまう。
聖南はこれまで誰も好きにならず、無茶苦茶の限りを尽してきた。
過去などすべて消してしまえたらいいけれどそうもいかない。
照れ隠しに窓の向こうを見詰めている、この純真無垢な愛すべき存在である葉璃を、絶対に傷付けはしないと固く心に誓った。
きっとこの傷が、過去の戒めになるはずだと思いながら。
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