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深々と溜め息を吐きながら「お前さぁ……」と腕を組んでお説教モードに入ったアキラが、着替え途中にも関わらず聖南の方へ詰め寄った。
「さっき言ったばっかじゃん。盛んなって……」
「セナ!! ハル君可哀想だろ、どこでしたか知らないけどこんな人いっぱいなとこでなんて!」
ケイタはケイタで、信じられないっと聖南に非難の目を向けているが、今さっき愛し合っていたのは聖南というより葉璃が盛ったのだからそんな風に言われても困ってしまう。
ただ、いくら葉璃が盛ったとしてもしっかり挿入して射精までした事を考えると、煽られたから……と反論も出来ない。
無論、葉璃のせいになどするつもりはないが。
「俺らみたいな付き合って一年目のカップルは、どこででもヤりたくなるんだろ? まさにそれだな」
「聖南さん! 変な事言わないでくださいよ!」
それまで黙って座敷に横たわっていた葉璃が、聖南の何気ない台詞は黙っていられないとばかりに、体を起こして頬を真っ赤に染めている。
しかし聖南は動じない。
いけない事言ったっけ?と、むくれた葉璃のそばに腰掛けて宥めるように頭をヨシヨシしてやった。
「なぁハル、大丈夫か? マジでさぁ、嫌な時は真剣に断わんねえと、セナ図にのるよ?」
「直接セナに言えないなら俺達が言ってやるから!」
「えっ!? い、いや……あの、でも……さっきのは俺から……」
「おい葉璃、自分で言うのかよ」
「……あ! そうですよね! 墓穴掘っちゃうとこでした!」
「もうほとんど言ってるようなもんだけどな」
「……へへ」
せっかくのアキラとケイタの擁護の甲斐無く、二人はお構いなしにイチャつき始めた。
聖南が葉璃の頬をツンと押し、嫌がるでもなく嬉しそうに微笑んで首を傾けた葉璃は、誰の目にも幸せそうだ。
今、成田が席を外していて良かった。
二人の関係を何となくは知っているであろうが、このイチャイチャを見たら卒倒してしまうかもしれない。
実際、アキラとケイタも、昨日から続く聖南の葉璃へのデレデレ具合には付いていけていなかった。
「……あのさぁ、仲良しなのは分かったから見せ付けてないで早く帰れ。じゃな、セナハル、また明日」
アキラはイチャつく二人に声を掛け、持っていたお茶を飲み干してゴミ箱に放ると、やってられないとばかりに手を振りながら楽屋を出て行った。
すっかり二人にあてられたケイタも同様で、獣扱いの聖南は無視して「ハル君またね!」とにこやかに去って行く。
残された聖南は、気負わない二人の前だからと、素を出し過ぎてしまった事を少しだけ反省した。
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もう歩けます、と立ち上がった葉璃と共に局をあとにすると、聖南は馴染みの小料理屋で一品料理を目一杯テイクアウトした。
葉璃は小柄なのだがよく食べるので、食べさせ甲斐があるからとついついいつも買い過ぎる。
それから自宅へと戻りシャワーでイチャイチャしながら葉璃の中のものをかき出していると、葉璃がとにかく可愛く啼くので、猛烈に抱きたくなったがそこはグッと我慢した。
痛み止めの薬の時間がすでに迫っていたからだが、空腹状態になると不機嫌になる葉璃のお腹を一刻も早く満たしてやらないといけないという使命感もあった。
ダイニングテーブルに買ってきた料理達を所狭しと並べていると、葉璃がジッと聖南を見ている事に気付いて視線を寄越す。
「なんだよ、またそんな見詰めてくれちゃって」
飲み物を用意していた葉璃がよたよたと聖南のそばへやって来ると、背中にピタ……と寄り添ってきて、まだ甘えん坊が継続しているのかと振り返った。
「聖南さん……」
「はーい?」
可愛いをどれだけ集めたら、こんなにも愛しい存在が生まれるのだろう。
上目遣いで甘えたように見てくるので、聖南はたまらず抱き締めたくなって両腕を広げたのだが……。
「昔の写真、見たいです」
などと、甘えん坊とはかけ離れた事を言われた。
甘えていたわけではなかったらしいと分かって、広げた両腕が宙を彷徨う。
「あー……っと。見せなきゃダメ?」
「ダメです。見たいです」
「…………」
あの佐々木がいらぬ事を口走ったせいで、葉璃が興味津々になってしまっている。
固まった聖南は、どうするべきかと天井を仰いだ。
悪い連中と付き合っていたのは確かだが、そういう雑誌に載ったのは成り行きで、CROWNとしてデビューする前にそれらとは関係を断っているのだ。
聖南自身も記憶から消し去っていた事を、あんなにも真面目そうな佐々木が知っていたなど思ってもいなくて、苦笑いしか出てこない。
まず、あの佐々木が相当にヤバい奴だったという事すら、楽屋内での葉璃の静かな絶叫で驚いたというのに。
聖南の暗い過去など、純粋無垢な葉璃には出来れば知られたくなかったし、当然、見られたくもない。
「……メシ食って薬飲んでからな」
「え! 見せてくれるんですか! わーい!」
目の前でキラキラと輝く瞳で可愛く見上げられては、葉璃にメロメロな聖南は逃げられるはずがなかった。
聖南のヤンチャ時代の写真を拝めるというだけで、無邪気に両腕を上げて喜ぶ葉璃に誰がノーと言えるだろうか。
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