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34❥ 深々と溜め息を吐きながら「お前さぁ………」と腕を組んでお説教モードに入ったアキラが、着替え途中にも関わらず聖南の方へ詰め寄った。 「さっき言ったばっかじゃん。 盛んなって…」 「セナ!! ハル君可哀想だろ、どこでしたか知らないけどこんな人いっぱいなとこでなんて!」 ケイタはケイタで、信じられないっと聖南に非難の目を向けているが、今さっき愛し合っていたのは、聖南というより葉璃が盛ったのだからそんな風に言われても困ってしまう。 ただ、いくら葉璃が盛ったとしても、ガッツリ挿入して射精までした事を考えると、煽られたから…と反論も出来ない。 無論、葉璃のせいになどするつもりはないが。 「俺らみたいな付き合って一年目のカップルは、どこででもヤりたくなるんだろ? まさにそれだな」 「聖南さん! 変な事言わないでくださいよ!」 座敷に居る葉璃が、体を起こして頬を真っ赤に染めている。 いけない事言ったっけ?と、着替えが終わった聖南はむくれた葉璃のそばに腰掛けてヨシヨシしてやった。 「ハル、大丈夫か? マジでさぁ、嫌な時は真剣に断わんねえと、セナ図にのるよ?」 「セナに言えないんなら俺達が言ってやるから!」 「え、いや…………あの、……さっきのは俺から…」 「おい葉璃、自分で言うのかよ」 「あ! そうですよね! 墓穴掘っちゃうとこでした!」 「もうほとんど言ってるようなもんだけどな」 「……へへ」 聖南は葉璃のほっぺをツンと押し、嫌がるでもなく嬉しそうに微笑んで首を傾けた葉璃は誰の目にも幸せそうだ。 ちょうど今、成田が席を外していて良かった。 二人の関係を何となくは知っているであろうが、このイチャイチャを見たら卒倒してしまうかもしれない。 実際、アキラとケイタも、昨日から続く聖南の葉璃へのデレデレ具合には付いていけていなかった。 「……あのさぁ、仲良しなのは分かったから見せ付けてないで早く帰れ。 じゃな、セナハル、また明日」 アキラは、イチャつく二人に声を掛け持っていたお茶を飲み干してゴミ箱に放ると、やってられないとばかりに手を振りながら楽屋を出て行った。 すっかり二人にあてられたケイタも同様で、獣扱いの聖南は無視して「ハル君またね!」とにこやかに去って行く。 残された聖南は、気負わない二人の前だからと、素を出し過ぎてしまった事を少し反省した。 もう歩けます、と立ち上がった葉璃と共に局を後にすると、聖南は馴染みの小料理屋で料理をたくさんテイクアウトした。 葉璃は小柄なのだがよく食べるので、食べさせ甲斐があるからとついついいつも買い過ぎる。 それから自宅へと戻りシャワーでイチャイチャしながら葉璃の中のものをかき出していると、葉璃がとにかく可愛く啼くので、猛烈に抱きたくなったがそこはグッと我慢した。 痛み止めの薬の時間がすでに迫っていたため、早く葉璃のお腹を満たしてやらないといけない。 すでにヘトヘトな葉璃を抱っこしてリビングに行き、ダイニングテーブルに買ってきた料理達を所狭しと並べていると、葉璃がジッと聖南を見ている事に気付いて視線を寄越す。 「なんだよ、またそんな見詰めてくれちゃって」 飲み物を用意していた葉璃がよたよたと聖南のそばへやって来ると、背中にピタ…と寄り添ってきて、まだ甘えん坊が継続しているのかと振り返った。 「聖南さん……」 「はーい?」 可愛いをどれだけ集めたらこんなに愛しい存在が生まれるのだろう。 上目遣いで甘えたように聖南を見てくるので、たまらず抱き締めたくなって両腕を広げたのだが…。 「昔の写真見たいです」 などと、甘えん坊とはかけ離れた事を言われた。 甘えていたわけではなかったらしいと分かって、広げた両腕が宙を彷徨う。 「あー……っと。 見せなきゃダメ?」 「ダメです。 見たいです」 「…………………」 あの佐々木がいらぬ事を言うから、葉璃が興味津々になってしまっている。 悪い連中と付き合っていたのは確かだが、そういう雑誌に載ったのは成り行きで、CROWNとしてデビューする前にそれらとは関係を断っているのだ。 聖南自身も忘れていた事を、あんなにも真面目そうな佐々木が思い出すなど思ってもいなくて、苦笑いしか出てこない。 まず、あの佐々木が相当にヤバい奴だったという事すら、楽屋内での葉璃の静かな絶叫で驚いたというのに。 聖南の暗い過去など、純粋無垢な葉璃には出来れば知られたくなかったし、当然、見られたくもない。 「…………メシ食って薬飲んでからな」 「わーい!」 目の前でキラキラと輝く瞳で可愛く見上げられては、葉璃にメロメロな聖南は逃げられるはずがなかった。

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