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あんなにもムードたっぷりなレストランは初めてで、ほとんど味なんか分からないほど緊張しつつ上品な料理を嗜みながら、夜景をバックに聖南と新年の挨拶を交した。
レストランを出てから、上等なもふもふの絨毯の上を弾みながら歩いてると「…かわいー」と聖南に笑われて、しょうがないじゃんって膨れたけど。
エレベーターでひとつ下の階に降りて、取っていたという部屋へ入ると俺はまたも回れ右したくなって、現在、扉から動けない。
「何してんの、おいで」
コートをハンガーに掛けている聖南は、扉にひっついて離れない俺を見て笑顔を溢してる。
「無理です、足が動きません。 寝るなら俺は廊下で十分です」
あの廊下の絨毯すら俺には勿体無いくらいだ。
ここからでもこの部屋の凄さが分かる。
一昨日寝かせてもらったホテルの一室の軽ーく三倍以上の広さがあって、どこに行くのか分からない螺旋階段まで設置されてて「ひぇぇ」だ。
ピカピカな室内と豪奢な造りから、これはもしかしてスイートルームというやつなのではと動揺が止まらない。
「動かないんなら仕方ねーな。 よいしょっと」
「わわっ、うー! 降ろして下さい! 聖南さんは慣れてるかもしれないけど、こんな立派なとこ、俺には場違いですってばー!」
「うるせーな、俺も初めてだっつーの」
抱き抱えられて暴れてても、軽々とベッドまで運搬されて優しく置いてくれた聖南の顔を見上げると、頬が赤かった。
「初めて…? 聖南さんも初めてですか? なんで?」
「なんでって……なんで?」
「だって聖南さん……いっぱいこういうとこで、その……あの……」
「してねぇよ、こんないいとこ連れて来るわけねぇだろ。 葉璃が初めて。 連れて来たいと思ったの葉璃しかいねぇから」
そんなスパッと言い切られては、俺は黙るしかない。
色々と慣れてる様子だったから、てっきり聖南はお目当ての人を落とすためにここの常連なのかと思った。
「どうする、シャワー浴びるか? このまま襲っていいならそうするけど」
「…あ、浴びます!」
「ふっ。 じゃあ運び直しなー」
笑顔の聖南は再度俺を抱えると、シャワールームへと運んでくれた。
やたらとシャワーを浴びたがる俺にちゃんと聞いてくれたはいいけど、この後待ってる事が予想できてつい手付きが遅くなってしまう。
聖南の家以外のベッドでするなんて初めてだから、どうしてもドキドキが止められなかった。
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