40♡ 5P 聖南がタオルを濡らしてきてくれて、お尻やお腹を拭ってくれたんだけど、子ども扱いされてる気がしてちょっと恥ずかしかった。 いつも知らない間に付けてるコンドームのおかげであんまり汚れてないから、さっき拭ってくれたのはほとんど俺の出したものって事だ。 衣装は着替えるなって言われたから、俺はまだうさぎの耳を付けたままで目の前の多過ぎる料理を前にハラハラしていた。 「あの、聖南さん…これ二人分ですか？ アキラさんとケイタさんが合流するとか…？」 「なんで？ 俺達だけのだよ」 「いや、さすがに食べられないですよ。 どんな頼み方したらこんなにくるんですか」 俺の隣に腰掛けた海賊聖南は届いた料理達に満足そうにしてるけど、明らかに量が多過ぎる。 二人分だって言われてもとても信じられない。 「どんな頼み方…？ 前菜とサラダとメインを全種類持ってきてって」 「全種類！？」 「葉璃なら食えるって。 ほら、食べよ」 いくら俺がよく食べる方だって言っても、限度がある。 お腹が空いてる事に間違いはないけど、さっきの激しい行為のせいで若干空腹が削がれてるのも確かだった。 「あースープ系も頼みゃ良かったな。 忘れてた」 いただきます、と手を合わせてフォークを持ち、手当り次第に食べていると、横でそんな事を呟く聖南の顔はマジだった。 ここで俺が「それもそうですね〜汁物欲しいですね」なんて言おうもんなら、また、スープ全種類持ってきてと注文しかねない。 「も、もう十分でふ！」 「……俺、もぐもぐ葉璃ちゃん好きなんだよなー。 美味い？」 「美味しいです！ でも思ったんですけど、聖南さんと会うと必ず外食な気がします。 俺料理覚えようかな…」 聖南とのごはんは、俺がまず行った事のないお店のものばかりだから嬉しいし、もちろん美味しいんだけど、これが毎回だと不経済過ぎる。 俺に美味いもん食わせたいって思ってくれてるのは知ってるからこそ、それはたまにでいいよって庶民の俺はサラダにがっつきながら聖南を見た。 今日は聖南も結構食べてるから、そこは安心しながら。 「俺作れるよ？」 「え？ 作れるって…聖南さん、料理できるんですか？」 「あぁ。 俺ずっとひとり暮らしみたいなもんだし」 「そ、そうでしたね…」 「ここ三年くらい寝に帰るだけみたいな感じで忙しいから、作るの面倒でやってねぇだけ。 食材買っといて腐らせんのもナイしな」 聖南の生い立ちから考えたら、それはそうかもって納得した。 自分で作るしか無かった当時を思うと、幼い聖南が見よう見まねでキッチンに立つ姿を想像して胸が痛くなった。 きっと誰の力も借りないで一人ですべてを覚えたんだ、聖南は。 料理だけじゃなくて、洗濯も、掃除も、お母さんという存在が居なかったから、誰にも教わる事が出来なかったはずだ。 誰も居ない家に帰り、聖南は自分の事を全部やってきた。 聖南は「俺マジでどうやって生きてきたんだろって今も思い出せねー」って言ってた。 無意識に、自分の事は自分でやる習慣が付いてたから、そう思ったんだ。 それがどれだけ悲しくて寂しい事か……。