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こんなエピソードは履いて捨てるほどある。
毎日がそうだった。
だからこそ、悔いているという後悔の言葉だけは聞きたくなかった。
「怒ってないわけねーだろ。 どの面下げて俺の前に居るわけ? 俺を息子だと思うな。 俺も親父だと思った事なんか一回もねぇ。 だから悔いなくていい」
聖南は立ち上がり、やっぱり今日は来るべきじゃなかったと思った。
こんなくだらない覚悟、しなければよかった。
「聖南、お前の怒りは重々承知している。 報道を見た。 付き合っている者がいるんだろう? 私に力になれる事があったらさせてほしい。 今までの事を思えば償いにもならんと分かっているが、いつもお前を思っていたのは本当だ…!」
『いつも俺を思っていた、だと…?』
「……その言葉にどれだけの信憑性を感じると思う?」
聖南は泣き笑うように美しく笑んで言った。
そんな言葉、今さら聞きたくない。
過去に遡って当時の自分にも聞かせたくない。
後悔している、それこそが父親の真意だ。
聖南を愛さなかった自覚があるという台詞の裏返しに、ついに心臓を一突きされた。
何か事情があったのかもしれない、どこかで微かにそんな期待を持っていた浅はかな自分は、この期に及んでも父親からの愛情を受けてみたかったのだと思い知った。
「セナ、今日はもういいから失礼しなさい。 ラジオの生が控えているだろう」
「……あぁ、悪いな。 渡辺さんによろしく伝えといて」
今にも涙を溢してしまうのではというほど、こんなにも聖南の切ない表情を見たのは初めてだった社長は、右手を上げて了解の意を示した。
出て行く聖南の背中は、明らかに泣いていた。
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