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ソーッと耳を澄ますと、聖南とケイタさんは下ネタ話から遠ざかり、ツアーの話をしていた事に安堵してアキラさんが襖を開けた。
「おー、遅かったな…って、何でまだ手つないでんの!? てかそのマフラーなんだよ葉璃!」
「寒かったから俺が貸したんだよ」
「ありがとうございました、あったかかったです」
後ろで結んでいたマフラーをアキラさんが外してくれて、それを俺が笑顔で返したもんだから途端に聖南のヤキモチが始まった。
「ちょっ!? おいおいおい、お前ら! 俺の前でイチャつくな! 葉璃こっち来い!」
聖南は胡座をかいた自身の足をバシバシ叩いて俺を呼んでいる。
こうなると宥めるのが大変だから素直に近寄ると、グイッと腕を引かれて聖南の胡座の中に収まった。
「セナ、騒ぐな。 何でもねーから。 ってかそんな事より、やべぇかも」
「何が」
聖南はアキラさんと会話しながら、背後からいつものように俺の首筋をクンクンと嗅いだ。
「撮られた。 俺とハル」
「はぁ!? 撮られたって…」
「遠かったっぽいけど、もしかしたら載るかもしんねぇ。 承知しといて」
いやいや…と聖南は絶句して、俺のお腹に両腕を回してすっぽり包み込んできた。
「フラッシュきたのか?」
「あぁ、バッチリ。 ハルはマフラーしてたから女と間違えたんだな」
「俺より先に葉璃と撮られんなよ」
「アキラとハル君が週刊誌に載るかもなんて、変な感じだなー」
密着した体から聖南の戸惑いが伝わってきたけど、ケイタさんの呑気な呟きでそれがちょっと怒りに変わったみたいだった。
俺は冷めてしまった鍋物を取ろうと身を捩って聖南から抜け出そうとしたのに、ぎゅっと抱かれてそれは無理そうだ。
ケイタさんがアキラさんに事の顛末を根掘り葉掘り聞いてるのを前に、聖南は後ろから俺の顔を覗き込んでくる。
「俺じゃねぇ匂いがする」
小声でそう耳元で囁かれて、まだヤキモチ続行中だったんだって分かって苦笑した。
きっとそれはアキラさんの香水の事を言ってるんだろう。
「…………マフラー借りてたからですか」
「かもな。 ………そろそろ帰るか」
ありがとな、と聖南は神妙な面持ちでアキラさんとケイタさんに告げると、濃厚でとても贅沢だった食事会はお開きとなった。
マスコミに撮られたかもしれないっていうのは三人からしたらそんなに大した問題じゃないみたいで、その場では全然尾を引かなかった。
聖南の車の助手席に乗り込むと、しっかりとした上質なシートが一気に眠気を誘う。
もうすぐ深夜一時だ。
今日は朝からレッスンで、夕方以降は本当に怒涛のように色々あった。
無意識に目を擦ってしまう。
疲れた、ほんとに………眠たくてたまらない。
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