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何が正解なのか、もう分からなくなってきた。
別れないためには、俺がどれだけ強くなれば、聖南の隣に居られるようになるのかな…。
聖南にとっての幸せが俺と一緒に居る事なら、俺がもっと強くならなきゃいけないんだ。
デビューして、聖南の背中を追いかけ始めたら、その強さも芽生えてくるかなって呑気だった現状の俺じゃ、聖南を守ったり救ってあげたりなんか到底出来ない気がした。
「葉璃が今俺と一緒だって知ったセナさん、ヤバイくらいキレてんだろうなぁ」
「……………ッッッ」
「無敗のこの俺でもセナさんには触れる事さえ出来ないよ。 だから俺がセナさん沈めるなんてムリ」
「触れる事さえ……?」
「セナさんキレるとヤバイから。 俺と時期被ってないから一回しか現場見た事ないけど、………って、これは葉璃は知らなくていい事だな。 余計な事話すとこだった」
危ない危ない…と言いつつ俺にまた手招きした佐々木さんは、いつの間にか眼鏡を掛けて髪も後ろに撫で付けている。
聖南の当時の話もすごく興味があったけど、今はそれどころじゃない。
俺が逃げた意味を分かってるはずの聖南に会えば、また俺は絶対に流されてしまう。
これからどうしたらいいのか、どうやったら俺は聖南の隣に居られるのか、いや、隣に居ない方がいいってうまく伝えるには何と言えばいいのか…。
海岸に着くまでのほんの少しの時間じゃ、俺にはその答えなんか見出だせなかった。
暗闇の水面がキラキラ光る海岸沿いの少し開けた場所に、見覚えのある高級車が三台と、多分荻蔵さんのと思しきこれも高級車一台がすでに駐車されているのを見ると、心臓が締め付けられるみたいに緊張してきた。
「一時間後って言ったのにな。 まだ20分前だ」
「…………………………うぅ……」
「葉璃、セナさんを信じろ。 俺が言うのもすごく癪だけど、セナさんは葉璃に本気だ。 局の廊下ですれ違う度に惚気てくるんだから、あのセナさんが」
先の四台と同じように横並びで佐々木さんも駐車させながら、俺を落ち着かせてくれようと早口でそう言ってくれたけど、ほとんど耳に入ってこない。
すでにキレまくってる顔の聖南と、それを止めようとしてるアキラさんとケイタさんがこちらに歩いて来てるのが見えたからだ。
その形相を見ただけで俺は呻く事しか出来なくて、咄嗟に顔を背けてエンジンが切られる音を聞く。
聖南怒ってる、当然だと思うけど、めちゃくちゃ怒ってるよー………。
ブチ切れ状態の聖南が助手席側のドアを開けてきて、ビビって動けない俺の代わりに嵌めてたシートベルトを解除した。
「おいで」
「痛っ…………」
腕を強く握られて車から降ろされた。
痛くて声を上げても、聖南は振り向かない。
「セナさん」
「あ?」
運転席から降りた佐々木さんが、さすがというべき度胸で聖南の前に立ち眼鏡を上げた。
苛立ちを隠そうともしない聖南の手から、痛いと顔を歪めてたからか俺の腕を抜いてくれたアキラさんとケイタさんも、見た事ないくらい真剣な顔だ。
「葉璃が少しでも悲しむような事があったら、海の藻屑になる覚悟しとけって言ったの、覚えてますか?」
「やれるもんならやってみろよ」
「……やってあげたいんですが、今日の葉璃は悲しんではいませんでした。 あなたとの付き合いを真剣に考えた上で悩み、苦しんでいる。 セナさんの事を守ってあげたいそうですよ」
バチバチと視線から火花が飛んできそうな二人は、この状況で互いに薄っすら笑みを浮かべている。
その凄まじい雰囲気と緊張感に、俺は目眩を覚えた。
間違いなくこの状況を招いてしまったのは、俺だからだ…。
「話は葉璃本人から聞く」
「セナ、とにかく落ち着け! セナがそんな状態だとハル君も話なんか出来ないだろ!」
「うるせーって。 俺は落ち着いてる。 震えがくるくらいな」
「落ち着いてねぇじゃん! ハル、家に送るからとにかく今日は帰った方がいい。 セナは俺らが何とかするか……」
「アキラ、余計な事すんなよ。 落ち着いてるって言ってんじゃん」
ケイタさんが止めても、アキラさんが止めても、聖南の瞳は血走ってて自身を制御出来ていなかった。
俺のせいでこんな事になって、聖南にもみんなにも迷惑かけて…。
ーーーいけない事だったの?
俺が聖南を守りたい一心でした行動は、そんなに大層な事だったの…?
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