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雑誌の取材が二件と、同じ場所での作業のために撮影スタジオに来ていた。
一時間ほどで取材は滞りなく終了し、少しの休憩時間の合間に聖南はスマホを取り出した。
恐らく葉璃は自宅に帰っていると踏んで、アキラとケイタに順に連絡を取ってみる。
アキラは来クールのドラマ撮影中との事で早々に通話を終えて、ケイタの方へと掛けてみた。
『セナ? どうした?』
「ケイタ、今どこにいる?」
『俺いま西区のダンススタジオ。 振付依頼あったユニットに指導中なんだけど』
「そっか、お疲れ。 何時頃上がれそう?」
『は? 何時だろ、遅くとも19時までには上がれんじゃないかな』
「それがケツ?」
『そうだけど。 何なんだよ』
「じゃあ終わったらすぐ葉璃ん家向かってくんない?」
『はぁ?? ハル君の?? いや、いいけど、どういう事なんだよ』
なんの説明もナシに葉璃の家へ向かえと言われたケイタは、当然の反応を見せた。
仕事中であるケイタの時間を割いて事の次第を一部始終話し、聖南の仕事をどれだけ巻きでやってもケイタより早くは上がれないと見込んで頼んだ。
「…俺より先に葉璃ん家行って居るかどうか確認してほしい。 スマホの電源落としてるから連絡つかねぇんだよ」
『マジかよ……でもハル君がどこ行ったかなんて分かんないだろ』
「家に居ると思うんだけどな。 万が一居なかったら連絡くれるか」
『あ、お姉さんの方は?』
「連絡したけど出ねぇんだよ。 悪いけど、ケイタよろしく」
本当はすぐにでも聖南自身が動きたかったが、仕事がある以上そうもいかない。
二人ならこんな時、聖南の心と足になって面倒がらずに動いてくれると信頼しての行動であった。
葉璃が心変わりをしたのなら話は別だ。
だがどれだけ離れたがっても、それが聖南を思うがあまりの行いならば、絶対に連れ戻さなければならない。
聖南と一緒に居てくれると言っていたし、もう離れないと何度も微笑んでくれていたのだから、恐れをなして逃げ出す気持ちを理解はしてやっても、離れてやる気はさらさら無かった。
それがたとえ生きにくい日々に繋がろうとも、葉璃と二人で居られるのなら造作もない事だ。
聖南を思って父親に代弁してくれたあの葉璃こそ、真意だと分かっている。
社長にバレても、世間にバレても、怖い事など何一つないと教えてやらなければ。
葉璃が無事に自宅に戻っている事を信じて、聖南は作業の為に眼鏡を掛けた。
昨日も散々抱きまくったから、きっと体は言う事をきかないだろう。
なぜ葉璃は度々、聖南との濃厚なセックスの後に切羽詰まるのか。
愛し合った翌日に逃げられる事に免疫が付くのはどうかと思う。
技術者の青木と共に作業に没頭する間、聖南は葉璃を想いながら苦笑した。
『俺がしっかりしなきゃだよな……』
聖南がポロポロと弱味を見せても、葉璃がすべてを全身で受け止めてくれるため甘え過ぎていたのかもしれない。
大好きだと伝え続けるだけではやはりダメなのだ。
何があっても大丈夫だ、守ってやるからと葉璃を安心させてあげなければ、この類いの悩みは葉璃の中で尽きる事はない。
聖南は葉璃さえ居れば何も要らないのだ。
その一言の重みを葉璃に受け取ってもらうためにはどうしたらいいのか、仕事はまるで片手間でそんな事を考えていた。
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