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【必然ロマンショー】覚醒 ※

何者かに、左右の脇腹をバシバシと叩かれている。 それも、何度も何度も。 「〜〜っ痛いよ、聖南さん! 聖南さん! 痛いってばぁ…!」 「………ん、………んっ!?」 叩かれている衝撃と葉璃の切羽詰まった声に驚いて、聖南は瞳を開いた。 「あ! やっと起きた!! もうっ、何なんですか!」 「…な、何がっ?」 「これ!」 これってどれ?と、聖南は首を傾げた。 ゆっくり葉璃の背中にのしかかっていた自身の上体を起こす。 どういうわけか、聖南が葉璃を組み敷いていた。 しかも、バックで挿入済み。 明日は二人とも朝早くから仕事だからと、昨日は清らかに眠りについたはずだ。 それが何故こんな美味しい状況に?と、聖南は何も考えずにとりあえず腰を動かしてみた。 「あっ……っ? ちょっ、なん、なんで……っ? やっ……ん、…んっ…」 「俺寝てた?」 「…ん、んんっ…っ、寝て、たよ、たぶんっ」 「マジか。 なんかすげぇリアルな夢見たんだけど」 まるで一本の映画を見ているようだった。 ラストのセックスシーンなど、本当に葉璃に触っているみたいだと思ったが、実際に触れていたのなら感触がリアルだったのは当然である。 やはり、葉璃が隣に居て何もせずに寝るなど性に合わないのだ。 夢を見ていたからとて実際に手を出していたとは、我ながら葉璃への愛が深いなと感心する。 「俺、α性だったぞ」 「なっ、何が…っ? いや、それより……あっ……俺の首、……血出てない…? すっごく痛いんですけど……!」 「首? …………あっ! …もしかしてこれ俺がやった?」 「他に誰が居るんですか! うぅ〜っ痛い〜っ」 葉璃は項を庇い、自由の効かない足をバタつかせて痛がった。 庇う手を取ると、そこには夢と同じ場所に噛み痕がくっきりと残っていて、痛々しい血が僅かだが滲んでいる。 「うわ、ごめん! どうしても葉璃と番になりたくて…!」 「番っ? なんの話ですか! ……って、寝る前に話してた……あれ?」 「そう、オメガ何とか。 その夢見てた…」 「んっ……っ…夢…って……!」 葉璃はいつも可愛いが、夢の中の素朴な葉璃も相当可愛かった。 ナチュラルな石鹸の香りと、体から沸き立つ本能を刺激するフェロモンは、夢だとしても下半身が何となくその感覚を覚えている。 Ω性のムラムラ葉璃は、現実と変わらずこの瞳で聖南を撃ち抜いた。 睨むように振り返ってくる愛しの葉璃にキスをして、背中にも口付ける。 「葉璃ちゃんフェロモン出しまくりなんだもん…我慢できっかよ」 「…出てないよっ」 「しかもさぁ、夢の中じゃ俺の半分しか入んなかったんだ。 ……んっ…と」 「あぁっっ……奥…っ、やめ、っ…!」 「ダメだなα聖南。 百戦錬磨とか言いながら慣らしが足りてなかったんだよ」 「……っ? ん…っ〜もう! 何の話を…っ」 「早く挿れてぇからって急いでやんの。 ちゃんと奥まで掻き回してやんなきゃなぁ? せっかく葉璃ちゃん濡れ濡れだったのに。 理性飛ばすのも良し悪しっつー事だ」 「えぇ…っ?」 腰を動かして最奥を突きながら、聖南はうんうんと一人で頷いた。 さっぱり訳が分からない葉璃は、突かれる度に枕へと顔を埋めて声を殺している。 膝に力が入らなくなってきたようで、ぺたんとうつ伏せで寝る格好になった。 「葉璃、横向いて」 「んんんっ…っ、苦しっ……せな、さん…っ…今日……大っきい…」 「あー? いつもは小せぇみたいじゃん」 「そんなこと、…言ってな……あっ…も、だめ…っ」 枕を握り締めて啼く葉璃を、好きな体位の一つである松葉くずしでさらに中を攻め立てた。 夢と同じく、葉璃は真っ裸なのに対して聖南は衣服をちゃんと着ていた。 性器だけを出して葉璃を抱いているなど、自宅でのセックスでは初めてかもしれない。 「…あー気持ちいい……さいこー…」 「んっ……っ、…ん、…っ…はぁ、…」 「葉璃、舌」 「んむっ…っ……っ……ふっ…」 「………イっていい?」 「……っ、ん、ぅん、っ……あぅっ、やっ、やっ、…早っ……も、待っ……ぁあっ…──!」 葉璃の口腔内から唾液を掠め取って飲んだ。 キスの余韻に浸る葉璃のおでこにちゅっと口付けた聖南は、膝裏を抱え上げて足先を舐め、素早く腰を打ち付ける。 葉璃を感じられる現実に戻って来られて、それが一番重要な射精前で本当に良かった。 覚醒前だと、葉璃が自身の射精で腹を汚す様を見られなかった。 聖南も、痛いほどに締め付けてくるこの中に精液を飛ばす快感を感じられなかったかもしれない。 夢と現実をウロウロしていて噛んでしまった項は、二回戦が終わったら手当てしてやろう。 「葉璃〜〜〜」 「はぁ、……はぁ……っ」 「葉璃ちゃん好きー」 「俺も…、………ちょっとだけ好きです」 「こら! なんでちょっとだけなんだよ!」 「聖南さん、ここ噛んだもん……夢見てたからって。 …起きるまで何も返事してくれなかったし……怖かった…」 「それは…めちゃくちゃごめんなさい」 「………聖南さんが素直だ…」 まったく身に覚えは無かったが、しっかりローションを使ってぬるぬるにし、三本指でとろとろに解し、夢では半分しか入らなかったギンギンのそれを葉璃の中に全部収めていた。 その間、聖南は夢の中だったので葉璃は相当に恐怖を感じたに違いない。 項を思いっ切り噛んでしまった事もそうだ。 「ごめんな。 だってこれは痛そうだ、マジで。 あ、でもこれでこの世界でも番になったって事だな?」 「………まだ夢見てるの、聖南さん?」 「起きてるって! ……なっ?」 「あ…っん…! 待って、まだするの、?」 明日早いのに…と零す葉璃の唇を奪った聖南は、一度の射精では萎えることのない自身で奥をツン、と突いた。 「葉璃からすげぇフェロモン出てるから……」 「で、出てません!!」 真剣に言い返してくる葉璃が可愛くて、聖南は正常位に持ち込んで二回戦を大いに楽しんだ。 ふと、中を貪りながら思い出す。 ───葉璃のミニスカートとハイヒール姿は萌えだった。 ───何ともいい夢だった。 【必然ロマンショー】終

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