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【もしも聖南と葉璃が赤ちゃんを預かったら】4

 りゅうた君を抱っこした聖南があまりに必死に取り繕うから、可愛いのと可哀想なのとで一気に気持ちが落ち着いてくる。  「葉璃、葉璃」って不安そうに俺を呼ぶ聖南は、きっと赤ちゃんが産まれても俺が第一だって豪語しそうだ。  ぐるぐるにかこつけて試すような真似して悪かったな……すぐに機嫌が直る俺って単純だよ、ほんとに。  きょとんとして聖南を見詰めるりゅうた君を見てると、さらに自己嫌悪だ。 「ごめんなさい。 聖南さんが浮気しないって分かってて意地悪言っちゃいました」 「もう〜〜マジでやめろよ。 俺がヤキモチ焼いて拗ねてたのに、そうやって立場逆転させるのうまいよな、葉璃ちゃん」 「ふふ……っ。 聖南さんが俺のこと大好きだからですよ」 「それは間違いねぇ!」  俺の独りよがりだったら恥ずかしい発言にも、大きく頷いて言い切ってくれる聖南が大好き。  突然のパパママ体験で聖南の事がもっと好きになった。  俺は聖南に近寄っていって、背伸びする。  聖南も分かってくれて、左腕で俺の腰を抱いた。 「葉璃……」 「聖南さん……」 「……ふぇっ……っ」  俺達はうっとりと見詰め合って、唇までもう少し……というところで真ん中から声が上がる。  今日預ってから初めて見る、りゅうた君のくしゃくしゃ顔に俺達はキスどころじゃなくなった。 「わわっ……! な、泣いちゃう……っ」 「よしよーし、りゅうた、パンツ替えたらミルクにしような? んっ? ミルクって勝手に飲ませていいのかっ?」 「はいっ、ちょうど聞いてた時間ピッタリくらいです!」 「俺何とかオムツ替えてみっから、葉璃はミルク頼む!」 「分かりました!」  それからの俺と聖南の行動は早かった。  俺は急いでスマホを持ってきて、林さんからのメールを開く。  ケトルの電源を再度入れて温めてる間に、ミルクの作り方を熟読した。  えぇっと……粉ミルクを入れて、お湯を三分の一くらい入れて、常温のお水を200mlの位置まで入れて、優しく振って溶かして、人肌になったら飲ませてOK……よし、準備は完璧。  お湯が湧くまであと数十秒ってところかな。 「おぉぉい、待て待てっ、フルチンでウロウロするな! 羞恥心を持て!」 「きゃっきゃっ♪」 「捕まえたぞぉ! ……んで? これどうやって……あ、こっちが後ろだ、テープは前に向かってきてたもんな。 っつーか、かわいーのぶら下げてんなぁ、りゅうた」 「うきゃっ♪ うきゃっ♪」  今にも泣き出しそうだったりゅうた君はオムツが気持ち悪かったのか、取り去った瞬間に聖南の腕からすり抜けてハイハイで逃げ回っていた。  キッチンから二人の追いかけっこを見守っていた俺は、聖南がオムツ替えに奮闘する様子を見てゲラゲラ笑った。  ミルクを作りながらも可笑しくて可笑しくて、笑いが止まらない。 「聖南さん……っ、もうダメ……、面白すぎる……っ」 「なんで面白いんだよ? えっ、てかそんなにミルク飲むの!?」 「みたいですよ。 じゃあ俺がミルクあげますね」 「うん。 あっ、やっぱり半分で交代しよ」 「ミルク飲ませてみたいんですか?」  哺乳瓶の先っぽから手の甲にミルクを出して、人肌まで冷ましたのを確認してからりゅうた君を受け取った。  聖南すごい……俺が笑いながらミルクを仕上げてる間に、初めてとは思えないくらいちゃんとオムツも替えて、ロンパースのボタンまできちんと留めてる。  しかもミルクまであげたいだなんて、母性本能ならぬ父性本能が爆発しちゃってるよ。 「あぁ。 葉璃がコレちゅうちゅうしてる妄想すっから」 「なっ!? 何を言ってるんですか!」 「だから妄想くらいはいいじゃん。 ほんとに哺乳瓶咥えさせたりしねぇ…………いつか赤ちゃんプレイする?」 「…………ッッ!? し、しません!!」  こんなに無垢な存在の前で、よくそんなエッチな事言えるよ!  信じられないっと聖南から視線を外して、小さなお手手で哺乳瓶を持ったりゅうた君を眺めた。  ごきゅ、ごきゅ、とうまく乳首を吸って、哺乳瓶の中のミルクがどんどん減っていく。  こんなに小さな体でも、お腹が空いたとか、パンツが気持ち悪いとか、お外が綺麗とか、感じた事をりゅうた君なりに自己表現している。  俺と聖南の間に赤ちゃんは望めないけど、こういう体験も悪くないなと思った。

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