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【別れ話】3※

 聖南はマットレスに両手を付くと、愛すべき体を愛さない律動を始めた。  内側を擦る毎に不自由な両手を聖南に差し出し、葉璃は泣く。  理性を失い掛けた今も、健気なその手を取ってやりたくてたまらず、葉璃の涙も見ていられなかった。  気紛れのキスをしてやりたいが、恐ろしい台詞を放った唇にどうしても口付ける事が出来ない。  繊細な秘部を粗く貫き、そこから無惨に出血してもおかしくないほど聖南は自分勝手に性を追う。  嫌われてもいいと思った。  葉璃に愛してもらえないのなら、聖南の未来は失くなったも同然だからだ。 「……っ、俺のどこがダメだった? 葉璃のためなら直すよ。 俺そういう奴じゃん」 「そうじゃ、ない……っ、せなさんに、ダメなとこなんて、ない……から……っ」 「はぁ? この際だから言っちまえよ。 何か不満があったんだろ? 離れらんねぇっつってんのに別れるとかほざくくらいの不満がさぁ」  ギシギシとマットレスが軋み、コックリングの嵌った性器も聖南の動きに合わせて派手に揺れる。  口をついて出るのは未練がましい台詞のみだった。  離れないでほしい。  そのためだったら何でもする。  嫌われてもいいけれど、また好きになって。  葉璃からの「愛してる」の言葉を聞かずに、想いが掴めないまま終わるのは嫌だ。 「葉璃、ダメなんだって。 俺達は離れちゃダメなんだ。 嫌いになった? 俺の事、いつから嫌いだった?」 「あぁっ……やっ……やっ……ちが、……っ」 「俺は無理だよ。 葉璃がいない人生なんて考えられない。 生きてる意味ない。 嫌いなら嫌いでいいよ。 どうしても離れたいって言うならいっそこのまま縛っとくよ」 「ちょっ……せな、さ、ん……っ! んっ……」 「葉璃は何にもしなくていい。 ただここに居ればいんだよ。 俺のそばに居るだけでいい」  もっちりとした臀部を鷲掴んだ聖南は、中腰で上から挿すようにして突いた。  葉璃の性器は根元をガッチリと囚われ、カウパーすらもままならない。 薄い腹や胸元に、自身のそれが落ちてゆく様を泣きながら見ている葉璃は、聖南にしがみつけない切なさにも涙しているようだった。  その様子は如何にも痛々しい。  千切れそうなほど締め付けてくる事からも、射精が差し迫っているのは聖南にも分かっていた。 「ぅあっ……ぁあっ……も、むり……っ」 「ほらここ、めちゃくちゃ腫れてんじゃん。 とりあえず説明だけしてみろよ。 苦しいんだろ? ドライでイくのはかなり体力消耗する。 我慢し過ぎると使いもんになんなくなるぞ?」 「ひっ……や、っ……やっ……痛、い、……んぁっ……」 「痛いって泣いてんの説得力無えよ。 葉璃……こんな事されて気持ちいいの? 嫌いな男から攻められて?」 「ぃや……っ、せなさんっ……イき、たいっ……出せな、……の、くるし……っ」 「……かわ……」 『やば。 かわいーって言いそうになった』  今にもキレて飛びそうな聖南でも、懇願に近い葉璃の嬌声は怒りが削がれる。  出会って以来ずっと、聖南はこの顔と声、心に魅了されているのだ。  一体何が葉璃の心を変えてしまったのか。  葉璃の居ない人生など考えられない。  この体を、心を、聖南以外の誰かが愛するかもしれないなど許せるわけがない。 「せなさん! とって、これっ……これとってぇぇ……っ」 「まだ理由聞いてねぇからダメ」 「やっ、やだ……っ、じゃあ動くの、やめっ……て……!」 「………………」  葉璃の限界が迫っている事を承知で、亀頭を使って執拗に前立腺を擦っていると縛られた両手で性器を扱こうと躍起になっていた。  否応なしに与えられる快楽の波に圧され、葉璃の全身が力んでいる。  内襞がこれまでにないほどに聖南を締め付けた。 ぎゅうぎゅうと性器を握り潰されているかのような感覚に、思わず動きが鈍る。  いくら不器用に扱いても、その時が一向に訪れないせいで葉璃が狂い始めたのである。 『俺堪え性無さ過ぎじゃん。 ちゅーしてぇ……』  啼き過ぎて恥ずかしいと、ロープ付きの両手で顔を覆う葉璃の涙が止まらない。  短く浅く呼吸し、縛り上げた右足も攣りそうだと絶え絶えに訴えられた。 「んっあ、あっ、……あ、っ……だめ、そこ、ばっか……っ、だめ、だめ、っ……!」 「一回ドライ経験してみな。 クセになって俺と別れるのやめたくなるかもよ」 「あっ、あっ……あっ、ちょ、待っ……せなさんっ……! むり、むり……イっちゃう、……ぅぅぅ……っっ」  葉璃の全身がビクビクと痙攣し、膨張しきった性器の先端からぽつりぽつりと雫が垂れる。  瞳をギュッと瞑り、何秒間か体を震わせた後───事切れたかのように意識を飛ばした葉璃の寝顔を、聖南は食い入るように見詰めた。 「……葉璃」 「………………」  問い掛けても、返事はない。  一瞬、まさか殺めてしまったのかと焦ったが、規則正しい寝息が聞こえてきたので安堵し、聖南は自身の精液にまみれた性器を孔からずぶりと引き抜いた。  ローションと聖南の欲が、秘部からとろとろと溢れ出る。 「葉璃、……葉璃……葉璃……葉璃……」  意識のない愛しい人を呼びながら、聖南はようやくその体を抱き締める事が出来た。  すぐにロープを解き、性器の膨らみが落ち着くのを待ってコックリングも外してやる。  根元に痕が付いている。 両手首と右足首にも、生々しい痕がある。  括っていた両手が、右足が、いつもの絶頂を迎えられなかった性器が、赤くなった目元が、ひたすら可哀想だった。

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