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★【BL萌えシチュをやってみた(恭也×葉璃)】
スタッフさんから台本を受け取った俺と葉璃は、内容を読んでしばらくフリーズした。
「え、……これって……」
「視聴者からのリクエストなんだ! 君たち二人の仲睦まじいところが最大限に活かされそうな内容だろう? 君達にとってもこれ以上の宣伝効果はない。 番組側も視聴率アップが見込めて万々歳。 まぁ深夜帯だからこそ通った企画なんだがな!」
「………………」
「………………」
ニコニコで笑いかけてくるプロデューサーさんに、無表情で応える俺と葉璃。
俺達がお世話になってるバラエティー番組のプロデューサーさんは、これからリハが行われる深夜の音楽番組も担当している。
もはや見知った仲となったけれど、俺も葉璃も気安く話せるタイプではないから、この台本の内容がどんなに危なげでも一言も文句は言わない。
世間からどう見られても、それを好意的に捉えて応援してくれるのなら、俺達も大切なファンとして捉える。
ただね……この台本は今後のETOILEはもちろん、先輩であるCROWNや事務所にまで迷惑をかけてしまうかもしれない内容だ。
いくら深夜帯だからって……。
「二人はただ台詞を覚えてもらって、その他は好きにやってくれていいから!」
「好きに……ですか……?」
「俺達、仲が良いのは本当ですが、付き合ってるわけじゃ、ないですよ?」
「だったら尚更いいじゃないか! 必要なら、 "これはフィクションです" とテロップは入れるぞ」
「絶対に、入れてください」
「分かった分かった! じゃあ早速一時間後から撮影開始だ!」
「い、一時間後!?」
「二本撮り、するんですか?」
「もっちろん! 来週まで引っ張れるからな! セットも準備万端だ!」
そんな……。
すでにセットまで準備されているなんて、どうあがいても拒否出来ないよ。
俺は役者としての仕事を経験していて、台詞を覚えるという作業は慣れてきたからまだいい。
……隣で見た事がないくらいの苦笑いを浮かべている葉璃は、芝居未経験なんだよ。
いきなり一時間後に撮りますと言われても、困っちゃうよね。
しかも内容が内容だ。
セナさんとなら良かったのにね、と思わず言ってしまいそうになった。
「……葉璃、……出来そう?」
林さんが企画趣旨の最終確認で楽屋不在中、俺は台本を手に力なくパイプ椅子に腰掛けた葉璃の隣に落ち着く。
顔を覗き込むと、何を考えているのか分からない無表情で黒目だけが俺を見た。
「恭也とコレをするのが嫌ってわけじゃないよ。 俺は、台詞が……」
「うん、そうだよね。 でも心配しないで。 俺が、葉璃の台詞も、全部頭に入れるから、もし忘れちゃっても、こっそり教えてあげるよ」
「ほ、ほんと……? そうならないように俺もがんばって覚えるけど、恭也がそう言ってくれるとちょっと安心したかも……」
ここで俺がリードするのは、当たり前だよ。
いつも葉璃に助けられてるんだから、今日くらいは安心して身を任せてほしい。
台詞さえ覚えれば、あとは流れに沿って普段通りに振る舞うだけで自然にそれっぽく見えるはず。
何より、葉璃が戸惑っているのは相手が俺だからという理由じゃなくて良かった。
「おいで、葉璃」
「ん……」
葉璃に向かって両腕を広げると、すぐに立ち上がって少し高い位置から俺を抱き締めてくれる葉璃に、耳打ちしておく。
「ちょっと感情が、入っちゃうかもしれないけど、許してね」
「…………うん?」
即興パロディでも台本がある以上、芝居は芝居だ。
渡された台本の中身は視聴者からのリクエストだと言っていたから、これを望んでる人が多いって事。
俺は願ったり叶ったりだけど……いいのかな。
葉璃と俺が恋人同士という設定で、二本も撮るなんて───。
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