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★【BL萌えシチュをやってみた(恭也×葉璃)】終

 余裕まで垣間見せていた積極的な態度が、見事に覆っている。  顔を真っ赤に染めて慌てる様を見てるのはかなり眼福だった。(これは役柄関係なく、単に俺の性癖かもしれない) 「何してるの。 今日はそういうプレイしたいの?」 「え、あの、っ……ボタンが……っ。 (恭也、また台本に無い台詞言ってる! しかも意地悪な顔してるよ!)」 「俺が外そうか? このまま焦らされるのも悪くないけど。 (ごめん、とっても楽しい)」  俺の中の悪魔が勝った瞬間だった。  この、素人/社会人/密室/でのイチャイチャシチュエーションをリクエストしてくれたファンの人達は、まさに神だ。  役になりきってると、本当に葉璃の恋人であるような錯覚に陥って歯止めが効かなくなってきた。  俺がアドリブで葉璃をいじめ始めても、スタッフさんはカットをかけない。 逆に、もっとやれって空気を感じる。  カメラの向こう側に居る大人達の期待に応えたい……という思いはほんの少しだけで、俺は存分に葉璃の恋人役を楽しむ事にした。  俺の足に跨っていた葉璃を抱え上げて、くるりと反転しソファに掛けさせる。  クッションに右膝を乗せた俺は、一度葉璃をぎゅっと抱き締めたあと一つも外れていないシャツのボタンに触れた。 「あ、えっ……っ、ちょっ……恭也っ。 (待って待って待って! なんで俺が下になるのっ? もうちょっとでカット入る予定だったのに!)」 「やっぱり葉璃が下になって。 この方がたくさん可愛がれる。 (俺、座位ってあんまり好きじゃないんだよ)」 「恭也……っ! (知らないよ! これはやり過ぎじゃないっ?)」 「いくよ、葉璃。 二秒数えたらボタン全部外れてるからね。 見てて。 (ファンサービスだと思って頑張って)」 「えっ!? う、わ……っ! (恭也のこの特技なんなのっ?)」  一、二、と数を数える間に、親指と人差し指で巧みにボタンを外す俺の妙技に、葉璃はいつかと同じ顔で驚いた。  真っ白な体が顕になる。  当然、胸元は膨らんでいない。  カメラに映らないように気を付けて、俺はそっと乳首を覗く。 さすがに胸元は触っちゃいけないと理性が働き、サラサラとした質感のお腹と腰を撫で回した。(ここでは完全に興味と性欲に負けた。 セナさんから殴られる覚悟もした) 「葉璃、社内ではジャケット脱いじゃダメって言ったよね? この腰の細さ、いやらしいんだよ。 誰にも見せないで」 「……ひゃっ……っ。 (恭也〜〜やり過ぎ〜〜!)」 「いい? 約束守れる?」 「んっ、……守る、……約束、守る……! (どうしちゃったんだよ恭也〜! 聖南さんと同じ目になってるよ〜っ)」 「いい子いい子、してほしい?」 「へっ? なに、……っ? (恭也ぁ〜っもう、やめて……っ)」 「何も知らないって顔、ゾクゾクするからやめな? まぁ……そんな葉璃が好きだよ。 いつまで経っても出会った頃の葉璃と変わらない」 「恭也……っ、やめ……っ。 (えぇ〜!? 恭也がおかしくなっちゃったよぉっ。 誰か早くカットかけてぇ!)」 「こーら。 逃げちゃダメ。 くすぐったいの? それとも気持ちいいの?」 「…………っっ!? (あ、っ……もしかして恭也、お芝居スイッチ入ってんのかな!?)」  俺の手のひらが言う事を聞かなかった。  おまけにキスの寸止めを何度もして、多過ぎるアドリブで盛大に葉璃を困らせてしまう。  一番悪いのは調子に乗った俺だけど、でも、葉璃も充分罪深い。  ヒソヒソ声と涙目で「恭也もうやめて」と切に訴えられた時なんか、……腰がビクッて震えたんだから……。 … … …  ノーカット版で放送したいくらいだと、絶賛された。  台本以上を演じた俺はスタッフさん達からの株はとてつもなく上がったけれど、肝心の親友からの株は大幅に下落したみたいだ。 「…………ごめんね、葉璃……」 「………………」 「たくさん謝るから、機嫌、直して?」  楽屋に戻って着替えを済ませた葉璃は、ずっとこんな感じでほっぺたを膨らませて俺と目を合わせようとしない。  怒ってる理由は明確だからと、ひたすら謝ってるんだけど葉璃がまったく口を利いてくれなくて困り果てた。  不思議と、嫌われていたらどうしようという焦りは無い。 膨らんだほっぺたが羞恥を表すピンク色だからだ。 「……俺の事、嫌いになっちゃった?」 「…………え、……っ」 「そっか、そうだよね。 やり過ぎちゃった俺なんか、葉璃は、気持ち悪くて、目も合わせたくない、よね……」 「い、いや……そんなことは……」 「いいんだよ、無理しなくて」  葉璃と目が合わないのが嫌でとことん落ち込んだフリを装う俺は、今日きっかけで新たな性癖に目覚めた。  この衝動はおそらく、葉璃限定。  今の今まで口を利いてくれなかった葉璃が、卑屈を演じた俺を必死に止めようと腕を掴んだ。 「恭也っ…っ違うよ! 気持ち悪いとか思ってないよ!」 「じゃあどうして、無視するの? いっぱい謝ってるのに、それが伝わったか、分からないよ」 「無視っていうか……その……っ」 「何?」 「こ、これ、聖南さんには絶対言わないでね! 絶対だよ!」 「うん、言わないよ。 二人だけの、秘密」  掴んだ手のひらをじわりと下ろし、モジモジと言いにくそうに秘密の共有を示した葉璃を、俺は期待を込めて見守った。 「……ちょっとだけ、…………ドキドキした」 「………………」  期待以上の答えが返ってきた。  そっか、と言いながら優しく葉璃を抱き締めてあげる事しか出来ない俺は、まだ演技の続きをしているんだと思い込む事にした。  だって俺は、「ちょっと」じゃなかった。  親友という枠からはみ出してしまうあの興奮は、絶対に葉璃と共有してはいけない。 ★【BL萌えシチュをやってみた(恭也×葉璃)】終 次回 おまけ【BL萌えシチュをやってみた(聖南×葉璃)】

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