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★【BL萌えシチュをやってみた(聖南×葉璃)】

〜 社会人イメプレ 〜(告白編・全二話) ※恭也と葉璃のBL萌えシチュ番組を自宅にてリアルタイムで観てしまった聖南が、猛烈にヤキモチを焼いてそれっぽいスーツに着替えたところから始まります。  ちなみに葉璃は聖南に番組の事を内緒にしていました。(アーメン) … … …  葉璃の六年先輩である聖南は、後輩の葉璃から想いを寄せられ、ついにその日がやってきた……という設定を瞬時に作り上げた聖南は、ネクタイを緩めながら椅子に片膝を乗り上げた。  もちろん葉璃もスーツを着用している。 「あの取引先は小さいミスでもめちゃくちゃ突っついてきてうるせぇから、真っ先に謝罪に行けって言ったよな?」  コスプレ好きの葉璃に対し、イメプレ好きの聖南は嫉妬を忘れて役に入り込んでいる。  役者としての技量は無いが、プレイであれば話は別らしい。  簡単な設定だけを告げられた葉璃は、饒舌な聖南に合わせていくしかなかった。 「は、はい……すみません……」 「すみませんで済むかよ。 先方カンカンにお怒りなところを俺が抑えてやったんだ。 何か言う事は?」 「はい、……あの、……日向先輩、ありがとうございます、……」 「それだけでいいんだよ。 すみませんなんか聞きたくねぇ。 (日向先輩……♡)」 「はい……すみま……あっ」  謝ってほしくないと言われたそばから謝罪を口にしてしまい、葉璃は俯いてしょんぼりと肩を落とす。  けれど聖南は、そんな葉璃の顎を捕らえて上向かせ先輩風を吹かせた。 「倉田はさぁ、覚えは早えけど柔軟性と機転が足んねぇんだよ。 いつまで俺の足引っ張るつもり? そうやって俺の気を引いてんの?」 「そ、そんなつもりは……! 日向先輩に迷惑かけたくなくて、俺も、一生懸命やってて……っ」  どうしても葉璃が聖南に恋をしているという設定は譲らないようである。  葉璃は秘めた恋心を聖南に気付いてほしいがために、あえて問題を起こしていると言う。  決してそんな事はしていない……とは言い切れない。 そういう設定なのだから、葉璃も大いに乗ってやらなければ聖南はさらにエスカレートしていくだろう。  恭也と演じた社会人よりもリアルな会話に、葉璃もだんだんとその気になってきた。 「日向先輩、……ほんとに、俺は……」 「何だよ。 いつもいつも猫みたいにジッと俺ばっか見てるの、知ってんだぞ」 「えっ!? そんな……、気付いて……っ?」 「あれに気付かねぇ男は鈍感通り越してアホだ」 「そ、そんなに、……見てますか? 俺、日向先輩のこと、そんなに……?」  社内で勤務中、葉璃は常に聖南を目で追っていた。 難しい顔をしてデスクでパソコンに向かう聖南、腕まくりをして部下に仕事を割り振る聖南、同僚と談笑するプライベートの聖南、……。(を、想像してみた。)  どれもこれも思い当たる節しかない。  入社してすぐから聖南に心惹かれていた葉璃は、無意識に彼の姿を目で追い、あわよくば褒められたいと思っていたのは確かだ。  本当に、気を引きたいから失敗しているわけではない。 好きな人から呆れられる事の方が、よっぽど嫌だからだ。(実際に聖南から溜め息を吐かれる想像をして、葉璃は何だかツラくなってきた。) 「……分かってんだよ。 倉田の気持ちは」 「え……?」 「俺もキツく言い過ぎたな。 カマかけるような事言っちまって」 「……っ、日向先輩、俺ほんとにがんばってるつもりなんです……だから、お願いです……呆れないでください……」 「呆れるわけないだろ。 倉田が一生懸命やってんのは、俺が一番よく分かってる。 意地悪言ってごめんな」 「……日向先輩……っ」  口調はどこまでも俺様だったが、葉璃の頑張りは伝わっていると告げてもらえるとそれだけで嬉しくて舞い上がった。  しかし未だ問い詰めるように葉璃の体を囲う聖南が、そっと頬に触れてくる。 そのままの体勢で瞳を凝視され、視線をそらせなかった。  毎日その姿を見られるだけで幸せだと感じていた本人は非常に寛大で、葉璃のヘマのせいで残業を余儀なくされても怒らないでいてくれる。  呆れない、とも言ってくれた。  聖南のデスクに座らされ(実際はいつものコーナーソファだが)、意味深に至近距離で詰め寄られては、葉璃の心臓が壊れそうなほどにドキドキと早く脈打つ。  まるでキスの合図を待っているかのような無言のアイコンタクトが、さらに胸を締め付けた。 「……日向、先輩……」 「何」 「あ、あの……離れて、ください……」 「離れていいの? 今チャンスなんじゃない?」 「チャンス、って……」 「待ってるよ、俺。 倉田の事めちゃくちゃ可愛いと思ってる俺が、すげぇ待ってる」 「………………」  唇が触れ合う寸前だ。  顎を捕らわれているので逃げ出す事も出来ず、かと言って聖南を突き飛ばして離れられるほど葉璃の気持ちも並大抵ではない。  毎日、毎日、聖南の声を聞くために出社していた。  帰宅してからも、聖南の姿を脳裏に思い描いて胸をときめかせた。  振り向いてもらえるとは一ミリも思っていなかった。 彼はみんなのもので、みんなが恋人になりたいと望んでいる。  葉璃はひっそりと想っているだけで満足だったのだ。  可愛いというのは聞き間違いだろうと、元来のネガティブ思考が告白の邪魔をする。 「倉田、言えよ」 「………………」

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