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☆セナ様とハル姫様のお話⑥※

 早速食してみようとした果実は、窓辺にポツンと置かれている。 灯りの役割をする、蝋によく似た素材の丸い物体のそばでちょこんと置き去りにされてはいるが、奇抜な存在感は隠しようもない。  せっかくのセナの勲章をハルがまだ味わえていないのは、疲れた体を休ませがてら、添い寝を所望したセナが我儘を言ったせいだ。  ハルに用意された寝床に横になったセナに、自分から寄って行ってまずは労いの意味を込めて口付けてみた。  恥ずかしかったけれど、とても勇気を出した。  するとセナは瞳を見開いて驚き、その瞬間から獣になっている。  信じられないとばかりに、何度も「いいの?いいの?」と確認を取りながらではあるが、着々とハルは素肌を晒す事になった。  体の変化が成されていない、まだ固く閉ざされている後孔にセナの指が這う。  あれよあれよという間に裸体となったハルは、この先の行為が何となしに分かっていた。  ひっ……と喉の奥を鳴らしたハルにはまるで見当も付かない、謎の成分で出来た何かをそこにたっぷりと塗り込められる。 「ん、っ……」 「ほんとにいいの? なんでここまで許してくれる気になったんだ?」  指先をぐにゅりと侵入させながら唇を奪うセナが、、何とも嬉しそうに問うてくる。  いよいよ本心を言う時が来たと、ハルはセナの着物を掴んで顎を逸らした。 「……せな様に、あ、会いたかったです……会って、伝えたかったんです……! 寂しかった、って……」 「え……それマジ?」 「俺、……んあっ……俺、せな様に愛されていた記憶はないけど、ここでせな様が、俺のために尽くそうとしてくれたことは、ちゃんと……んんんーーっ」  繋がるためのそこを丁寧に解す指先が、思わず背中が反り浮かせてしまう何かを擦り上げる。  意識が朦朧とするほどの長い時をかけて、ハルの体を愛するセナの吐息が全身に熱を帯びさせた。  控えめな嬌声を上げていると、呼吸と唾液を奪いにやってくる。  唇と両手を駆使し、前後から刺激を与えてくるセナの愛撫はどこまでも優しかった。 「それでいいんだ。 俺達が愛し合うのは必然なんだから、焦ってはなかったよ、俺」  何もかも、覚えていないハルのせいではないとセナはしきりに囁いてくれた。  追い掛ける日々は以前よりツラくなかった、必ずセナに心を許してくれるはずだと思っていたと、並々ならぬ自信を伝え、腰を揺らめかせるハルを微笑ませる。  脱力した隙を狙い、ぐぷ、と侵入してきたものがあまりにも熱く、それだけでハルは気を失いかけた。 「あっ……せな様……っ、せな様……っ」 「今日はマジで添い寝だけで良かったのに……繋がれるとは思わなかったな。 頑張って良かった」 「んん……っ……せな様……っ、こわいです、俺のからだ、変になってる……っ!」 「変じゃねぇ。 綺麗だよ。 ……感じてくれてるし?」 「あ、そんな……声、……っ、せな様……声、すてき……」  密着するセナの背中に腕を回し、ぷるぷると全身が小刻みに震えるほど彼の声が何らかの媚薬のように体内をかけ巡った。  ジッとしていられないのか、ハルは両足でセナの体を捕らえたりやめたりを繰り返している。  力の入らない腕も同様で、ずるずると内壁を擦られる度に甘やかな痺れが指先の自由を奪っていた。 「かわいーなぁ、もう。 はる、かわいー」 「───っっ!! 聞いたこと、ある、……! せな様の、「かわいー」、なんだか、懐かしい……っ」 「…………俺の記憶、はるの中に流していい?」 「……え、……!?」  セナはそう言うと、ハルを優しく抱き締めて瞳を閉じた。 ハルもセナを真似てそうしてみると、すぐに白黒の映像が脳裏に浮かぶ。  どこだか分からないけれど、そこはとても広い場所だった。 辺りは暗いけれど、目の前一面に様々な色の光が規則性を持って揺れている。  隣にはセナらしき人物が居て、ハルに笑い掛けていた。  そのセナは黒い棒のような物を持ち、それに向かって何かを喋り、ハルを見てまた笑う。  この映像は何なのだろう、と思う前に、瞳を開けたハルの唇が勝手に動いた。 「…………聖南、さん……」 「どした? ……葉璃」 「あ……っ!」  断片的で、ひどく朧気で曖昧な記憶。  けれど確実に、セナから送られてきた映像はハルが命ある頃に経験していた。  セナとハルは、愛し合っていた。 キラキラした夜空のような場所に、共に立っていた。  記憶を共有した二人の中に、懐かしい感情が次から次へと溢れて止まらない。 「せな、様……っ」 「分かっただろ。 俺達はこうなる運命、……こうなる事が必然なんだ」 「はい……っ、……はい、……っ」  痛みも悲しくもないのに、ハルの眦からは止めどなく涙が溢れ出す。  わけも分からずこの地にやって来たハルへ、セナは目が合って一言目にプロポーズをした。  二度と離れたくない……直感能力を持つセナが記憶を辿る前である。  ハルを待っていたセナの元へ来れた事が、もはや必然だったのだ。  しつこいほどの快楽の波に揺れながら、ハルはセナの背中をしっかりと抱き締め続けた。

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