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第30話
シャワーで塩水を流した2人はすっきりした顔で扇風機の風を浴びる。
温いが風があるだけ気持ちが良い。
「えっと…改めて、こちら生物部の部長で古志薫くんです。
あの…観光に…。
あ、それで年甲斐もなく、海に飛び込んでしまって……」
苦しいかと思ったが、久しぶりの来客に母親はにこやかに頷いた。
「急にお邪魔して申し訳ありません。
タオルやお風呂まで借りてしまって…。
麦茶、美味しいです。」
古志くんの言葉に、カランと氷が溶けて動いた。
お愛想に母親はにこにこと目を細めている。
古志の甘い顔立ちは女性受け抜群だ。
「気にしないで。
お口に合って良かったわ。
そうだ、光輝。
部屋も余ってるんだし泊まっていただいたら?
宿だとお金かかるやろ。」
「良いんですか?」
「えぇ、勿論。
今ちらし寿司作っててご飯も沢山あるから遠慮しないで。
あ、おそうめんも湯がこうかしら。
あと天ぷらも。」
「母さん…勝手に話進めんで…。
古志くん圧倒されとる…。」
「ご迷惑でなければお言葉に甘えさせてください。」
母さんと話していると、古志くんの視線が開けっ放しの襖から続く茶の間へと向けられていた。
多分、どんぐりだろう。
「どんぐり、いますよ。」
ふんわりとやわらかく微笑んだ相川に古志は視線を戻した。
「じゃあ、母さん買い物行ってくるから光輝、留守番お願いね。
古志くん、ゆっくり寛いでね。」
「はい、ありがとうございます。」
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