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第31話
「どんぐり」
古志の声にどんぐりのくりくりした大きな目が古志に向けられる。
古志の声は嬉しそうに弾む。
どんぐりも心なしか嬉しそうだ。
「元気か。
だから便所飯はやめろって。
出てこいよ。」
学校と変わらない声が、実家に響く。
不思議で、だけど嬉しくて。
「先生、おやつありますか?」
「あ、はい。
持ってきますね。」
「ありがとうございます。」
ケージをつつくその横顔に相川は心奪われる。
人を好きになる、そのはじめての気持ちが擽ったい。
「ただいまー。
光輝ありがとう…」
茶の間に置かれたゲージの前で2人揃って突っ伏している様子に相川の母親は目を細めた。
すぅすぅと規則正しい寝息を乱さない様に2人にタオルケットをかけると台所へと戻って行く。
簾の間から気持ちの良い風が吹き抜ける中、2人は夕飯まで心地好い眠りの中にいた。
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