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第32話

「ちらし寿司すっごい美味しいです。 このトマトも甘いですね。」 「そんなかしこまらなくて良いですよ。 楽にしてください。 海が近いですから魚が美味しいんです。 そのトマトは祖父が育てたんですよ。」 太陽の恵み、海の恵み、山の恵み、 人間は自然界から恵みを受けて生きている。 小さい頃から祖父母はそう言っていた。 野の作物は全部収穫するのではなく、鳥や山の生き物、その作物自身の為に全部は採らない。 勘違いをしてはいけない。 人間こそが頂点ではなく、皆同じ命。 共存して生きている。 祖父や父は時には目を逸らしたくなる様な食物連鎖も隠す事はしなかった。 頂点に立っているから偉いのではない。 感謝をし美味しく食べる事こそ、頂点に出来る事だ。 当たり前の事を当たり前にと、祖父母も両親も教えてくれた。 だからこそ、今生物の教師をしているんだと思う。 「口に合って良かったっちゃ。」 「あ、俺注ぎます。 どうぞ。」 「ありがとう。 いやぁ、今日は酒が進むっちゃ。 光輝もおるし良い日やね。」 こんなににこにことした祖父や父を見るのは久しぶりだ。 古志くんも気を遣ってはいるが楽しそうにしている。 それに、そんな古志くんを見れて僕までにこにこと頬が緩んでしまう。

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