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第48話
サウナ状態の廊下を歩くだけで汗が吹き出す。
それも昼休みともなれば殊更だ。
1日の中で1番気温が高い時間帯。
体力のない相川はそれだけでぐったりしてしまう。
「あの…、長岡先生…」
「はい?
あぁ、相川先生。
どうかされましたか?」
生物室の反対側、教科準備室に顔を出すと目当ての人はすぐに廊下に出て来てくれた。
古志くんより身長が高くて綺麗な顔をした長岡先生は、見た目よりずっと話しやすく良くしてくれる。
中身は真面目で生徒思いで、真っ直ぐ。
凄く格好良い。
「あの…、実家に行って来て…これ、お土産です」
「戴いても良いんですか?
ありがとうございます。
干物ですか。
嬉しいです」
古志の顔立ちは甘くてアイドル系の華やかさを持ち、長岡は綺麗で爽やかで格好良い。
長岡は嬉しそうに、顔面の良さを惜しみなく活かした。
これは女性だけでなく、自分もキュンとしてしまう。
干物ならグリルに入れるだけで難しい調理はいらないと購入したが、今の若い人は干物を食べるのだろうか。
今更になって心配になってきた…。
「…食べ、ますか…?」
「干物ですか?
食べますよ。
居酒屋とかですけど。
焼き立て、美味しいですよね」
長岡は人の気持ちを軽く踏みにじらない。
相手を尊重し言葉を選ぶ。
見た目通り綺麗な人だ。
「…お口に合うと、嬉しいです」
はにかむ相川に、長岡は何かを感じたがそれを飲み込み頷いた。
きっと、良い事だと思うから大丈夫だと。
「元気そうで良かったです」
「…?
長岡さんも、夏バテされないでください」
「はい。
ありがとうございます」
小さく笑った長岡に相川も素朴なそれを返した。
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