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監察日誌:決定的な失恋と唐突な脅迫事件2

***     失恋しても腹は減る。仕事が進まなかった今日は、残業しないことにした。夕飯を買うために傍にあるコンビニに寄って、そのまままっすぐ自宅に帰る。 (最初から好きにならなきゃ、こんなモヤモヤした気持ちをせずに済むのに……本当厄介だよな)  そんなことを悶々と考えながら部屋の明かりをつけて、テーブルの上に買ってきた弁当をのせようとビニール袋から取り出したら、中からレシートがはらりと落ちてきた。 (確かレシートは、コンビニのレジで捨てたはずなのだが――)  床に落ちたレシートを取ろうとして腰を屈ませると、裏になにかが書かれているのに気がついた。 「……なんだ?」  咄嗟の判断でポケットからハンカチを取り出し、指紋が付かないようにレシートを拾う。とりあえず明日、前歴者リストから指紋を検索して、ホシの目星をつけようと思いつく。  目の前にレシートを掲げ、裏面に書いてある内容を読んでみる。 『微糖の君へ  アナタのメガネになりたい。一番先に、アナタの視界に入りたいから。  アナタの携帯電話になりたい。すぐそばでアナタの声を聞きたいから。  アナタの吸うタバコになりたい。アナタの唇に触れたいから。  アナタを、ずっと見ていました。』 「おいおい。俺はストーカーされていたのか? 恐ろしいことばかり、羅列されているじゃないか……」  背筋がゾッとして、食欲が一気に失せた。自分が好きな微糖の缶コーヒーや煙草を吸うことも把握されている時点で、気持ち悪さに拍車がかかる。しかも今日は失恋のショックを引きずっていたせいで、いつもよりぼんやりしていたから、店員の顔すら覚えていない。だが、ひとつわかっているのは――。 「ストーカーしている相手は、男だってことだ……」  いったい、いつから狙われていたのだろう? こんな俺が男に好かれる覚えは、まったくないのだが。  眉間にシワを寄せて考えても、さっぱり頭が働かない。 「いろんなショックが一気に重なり過ぎて、今日はダメだな。明日やっつけよう」  テーブルに置かれた弁当を冷蔵庫に放り込み、さっさとシャワーを浴びて、この日は早く就寝した。  明日朝一番で、調べ物をしようと思ったから。

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