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監察日誌:決定的な失恋と唐突な脅迫事件4

***    俺の心配を他所に、水野くんと男子高校生の恋愛は災い転じて何とやら。いつの間にか、上手くいってしまったようだった。  だって―― 「デカ長、今度の日曜、有給使わせて下さい」 「急にどうしたんだ?」 「実は、翼の家に行くことになりまして……」  たまたま用事があって、三係に顔を出した俺の目の前で、凄い話が展開されていく。  水野くんの後方で腕を組んで佇むと、林田さんが微妙な表情を浮かべた。俺は唇に右手人差し指を立てて、ナイショをお願いする。 「お宅訪問って一体、何をやらかしたんだ?」 「ミズノンってば顔に似合わず、手が早いんだね。昨日の二十分の逢瀬で、何をやったんだよ?」  俺の存在を華麗にスルーした刑事が、水野くんをからかうように声をかけた。その問いかけに、思いっきり顔を引きつらせた姿は正直、面白いの一言に尽きるものだ。 「上田は席に戻りなさい。話がややこしくなるから……で、水野は何をやったんだ?」 「翼が大学受験を辞めて、警察官になるって言いだしたんです。お父さんがえらく反対しているそうで。その説得に、俺が出張ろうってことになりました」 「……間違っても、息子さんをください。何て失礼なことを言うなよ。休んでいいから」 「デカ長、ありがとうございます!」  林田さんの冗談をスルーして、大喜びする水野くん。俺なら、お父さんをください! にして困惑させるがな。  さて、冗談はこれくらいにして……本題に入らなければ。  頭を下げて、自分の席に戻ろうとした水野くんを不機嫌丸出しで、思いっきり睨みつけてやった。 「監察官から、直々のお呼び出したぁ水野。覚悟しておくんだな」 「あ~あ、バレちゃったんだね。ご愁傷さま」  林田さんと先輩刑事が、手を左右に振っている。 「何で呼び出されるか、分かっているよな水野くん」  俺の言葉に曖昧に頷いた彼を、監察室へと連行した。  ――さあどうやって、料理しようか?

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