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監察日誌:熱い視線と衝動的な想い4

*** 「ん……?」  寝返りしようと体を動かしたら、背中に壁が当たって身動きが取れない。セミダブルのベットに男がふたり、やっと寝ているのだ。腕の中にいる雪雄を見て、やっと自分の置かれている状況を把握した。  口を少しだけあけ、しどけない様子で眠る可愛い姿に、自然と笑みが浮かんでしまう。 「こんな姿さえ愛しく思うんだから、相当まいってるよな……」  柔らかい頬にキスをしてやると、少し身じろいでから、すりりと俺に体を寄せてきた。  まったく――無防備すぎる。今の俺が何もしないと分かっていて、寄ってきてるんだろうか。 「俺のどこが、そんなにいいのやら……」  ポツリと呟いたら、ふっと目を開いた雪雄。 「形の良い耳……」 「なんだ、起きているのか?」 「ん……。何か聞こえたから、答えただけ」  ぼんやりとしながら、ぶつぶつ答える。もしかして寝ぼけているのか? 「耳が良いなんて、変わってるな」 「あとね……神経質な関さんに似合わない意外とゴツい造りの、血管の浮き出た手が好きなんだよ」  この微妙すぎる感覚、山上に通ずるものが、あるようなないような。  大学では建築学を学んでいる雪雄。以前空間デザインについて、熱く語られたのだが、正直なところ話についていけなかった。  俺は見たまま、白か黒かを判断する。だが雪雄は違う角度から物事を判断し、鮮やかな色彩をつける。自分にはないその感覚に惚れ込んだのだろうと、容易に分かったのだが。 「ねぇ、関さん……」 「どうした?」 「俺……ウザくないですか?」  余程気になったのだろう。うつらうつらしながらも、たどたどしく訊ねてきた。 「バカとは言ったが、ウザいなんて一言も言ってないぞ。ウザいくらいが、俺には丁度いいんだ。そんなこと気にするな」 「そ? 良かった……」 「ああ。安心しろ。大丈夫だから」  俺の言葉にちょっとだけ微笑んでから、気を失うように眠りについた雪雄。    ウザい……前の彼のことを引きずっているから、心配になって出た言葉だろう。きちんと俺を気持ちを伝えていれば、いらない不安を募らせる必要なんてないのに。 「これでも少しは、前進したつもりなんだがな」  お前から貰った好きに見合うくらいの愛を、俺はいつ渡せるだろうか? この両手から零れそうな程の愛を、お前は受け取ってくれるだろうか? 「焦がれているという言葉じゃ足りなんだよ。本当に困ったな」  雪雄の体から伝わる心地良い熱が、ゆっくりと眠りの世界へ導いていくようだ。俺は目を閉じて、雪雄を抱きしめた。 「夢の中でも、お前に会いたいなんて。俺の方が相当、ウザいヤツだろうに……」  雪雄はこれを聞いたら、何と答えるだろう? 瞼の裏に恥ずかしがっている雪雄を思い浮かべながら、引きずられるように眠りについたのだった。

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